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小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night34

哀羅王子は足早に陽明門をくぐり、そのままの勢いで我が邸に帰った。三条の西にある父親から受け継いだ邸である。十五年前のあの日までここに住んでいた。  あの日、ここにいては命が危ないと言われて、半信半疑であったが、その男の言葉について都を出た。...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night33

新年の行事は快復された大王が取り仕切られた。大極殿の広間に元気な姿をお見せになって、広場に集まった臣下たちは歓び、安堵した。  しかし、都の中には、大王の病気は呪いだという疑惑が根強くあり、また、皆が後継者問題を意識し始めて、不穏な雰囲気に...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night32

「家族団らんのところをお邪魔したかな?」 「そんなことはないさ。子供達も疲れて寝てしまったし、礼も一日忙しかったから休みたいだろうよ」 「……それならいいのですが」 「それに、私が麻奈見と話したがっていることが分かったのだよ。少し話をしよう...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night31

夜が深まると、音楽や舞の好きな者と宮廷楽団から招いた二人を交えて仕切り直しの管弦と舞の催しが始まった。皆、庇の間まで出てきて、庭に作られた舞台に注目した。  碧妃と有馬王子は正面の部屋に座り、後ろに岩城園栄と実父の河奈麿、園栄の長男の蔦高が...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night30

季節は秋から冬へと変わっていく。 大王のご病気で、新嘗祭は規模を小さくして、春日王子が代行して行った。それが終わると、新しい年に向けて準備が進んだ。  大王の病気は快復したが、大王の気持ちは弱くなった。あれ程自信に満ち溢れていた大王が臣下の...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night29

的を近くに置いて、弓を引く練習をしていた息子の孝弥を荒益は少し後ろから見守っていた。まだ七つでは力がないので、無理のない距離で弓を的に当てる練習をしているのだった。  孝弥はちょうど弓を肩の高さまで上げたところで、渡殿を渡る母の姿を見つけて...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night28

春日王子はくるりとその身を反転させて、御帳台の方へと体を向けると、朔に向けていた柔和なその表情は作り物の面をだったかと思うほどに、眉間を険しくして厳しい顔になった。 「大王のところに行くから、着るものを用意してくれ」  春日王子が言うと、几...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night27

翌日に、岩城園栄は有馬王子を連れて王宮を訪れた。御簾を下ろした中に横たわる大王の傍に、有馬王子だけがお入りになった。その日は、大后がお傍にお付きになっていたので、幼い有馬王子の手を取って、病に臥せっている父君を一緒に励ました。  体調のすぐ...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night26

お薬の庭とは、礼の薬草園のことである。今まで礼はそこに子供たちを近づけはしなかったが、今日は違った。二人は薬草園に行きたがって駄々をこねても、優しい顔をしてくれなかったお母さまが今日は行こうと言ってくれたのではしゃいだ。  裏庭の一角を仕切...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night25

碧妃が出産のために岩城本家に戻って一月が経つころ、大王は突然に体調を崩された。発熱して、床に寝付いてしまわれたのである。王族も臣下も皆が心配した。宮廷にいる医者が交代でその様子を見守り、それとは別に、大后が神殿で祈祷をして、大王の健康の回復...
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