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小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night62

月の宴を二日後に控えて、今日は会場となる翔丘殿で本番さながらの予行を行う日である。前日までに内装、装飾、舞台は整えられていて、番人が雨風の番をしている。  朝から翔丘殿には続々と人が集まってきた。まずは、宮廷から楽団が大人数で列をなして翔丘...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night61

月の宴は三日後に迫った。  礼は、夜遅くまで縫物をしていた。最近の実言は、宴の準備に忙しいらしく、邸には夜遅くに帰ってきたり、宮廷や本家に泊まって昼間にふらりと帰ってきたりした。今日も、昼間に出て行ったきりいつ帰ってくるかわからない。  縫...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night60

哀羅王子は家人を一人連れて、倉へと向かった。邸のすぐ裏にある倉には、十五年前にここを離れるとき、父である渡利王が書き記したものを箱にまとめて入れて収めてある。筆まめな父の書いたものを再びみようと思ったのだった。  家人が錠の前で少し苦戦して...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night59

それから朔は言われた通りすぐに寝所に入った。月は雲に覆われていて明かりのない夜である。真っ暗なのが嫌いな朔は高灯台に多めに油を入れるように命じていた。体を横にすると力が抜けて行って、自分がとても疲れていたことが分かった。静かに瞼を閉じた。 ...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night58

朔は後宮から部屋に帰ってくると、庭に面した階の一番上に腰を下ろして庭を眺めた。夏の暑さが緑を鮮やかに燃え立てさせていて、その間に色とりどりの花が咲いている。いつまで見ていても飽きない景色である。  実家の常盤家の庭も広くていろんな趣向を凝ら...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night57

荒益は母と息子の伊緒理が住んでいる椎葉家の別宅に着くと、侍女が飛んできた。その顔を見て、伊緒理だな、と思った。 「どうした?そんなに悪いの?」  荒益は、答えによっては飛び出していくつもりだ。 「いいえ。今は、落ち着かれています。熱も下がり...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night56

宮廷内に与えられている自身の館の簀子縁に出て、高欄に体を預けて外を眺めていた春日王子は、朔が向こうから歩いてくる音にすぐには気づかなかった。 「王子?」  何度かの呼びかけで、やっと春日王子は朔の方を振り向いた。 「ああ、すまない。考え事を...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night55

五日はすぐに経った。  大田輪王は二人の舎人を連れて徒歩で哀羅王子の邸に来た。哀羅王子は供を付けずに大田輪王の案内で、六条の通りをずっと西に行った都の外れにある築地塀に囲まれた束佐という臣下の別宅へたどり着いた。  訪いを入れるまでもなく、...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night54

佐保藁の邸で、春日王子は部屋で酒を飲みながら物思いに耽った。  大王が息子の香奈益王子に朝議の場で頼る姿に心の中では苦々しく思っていた。春日王子よりもより近い場所に座らせて、いつでも声をかけて話をしている。春日王子が意見を言っても、香奈益王...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night53

大王の体調は大きな不調をきたすことはないが、昔の快活で豪気な様子は見られない。いつ、胸の痛みが襲って来くるか、息ができないほどに咳き込みがはじまるのか、という恐怖がつきまとっているのだった。  昔のように妃たちを連れて、遊びを楽しまれること...
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