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小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night81

春日王子は階の一番上に立って空を見上げた。  西に陽が沈みかけ、東の空にはうっすらと月の姿が見えた。  もう都の上空には春日王子が謀反を起こすという空気が渦巻いている。この空気を無力にするには、春日王子がその意思はないことを示すべきだ。しか...
物語あれこれ

小説の参考に行ってきました ~よみがえる正倉院宝物 再現模造にみる天平の技~

大好きな飛鳥~奈良時代について少しばかりお話させていただきます この物語の設定は、飛鳥~奈良時代にしていますが、生活様式は平安時代を取り入れているという、作者の都合のいい話になっています。 本を参考にしていますが、現地調査として奈良にたびた...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night80

差し出された椀の中には、ほんの少しの粥が入っているが、哀羅王子はそれを全部食べ切るのに苦労していた。礼は粥の汁だけでもすすってもらおうと思うが、哀羅王子は口を閉じて顔を背ける。  礼は、後ろにいた侍女に井戸の水で冷やしていた梨をむいて、哀羅...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night79

月の宴から三日目。荒益は、少し遅くに宮廷へと上がった。  平和ないつも通りの日常だと、都に住まう大多数は思っている。しかし、一歩宮廷の中に入ると、そこここで役人たちはくっつきそうなほど顔を寄せ合ってひそひそと話している。その光景は一組ではな...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night78

礼は静かに部屋の中に入ったが、すぐに気づいた侍女が言った。 「こちらは大丈夫ですわ」  礼は侍女の隣に座った。 「あなたは続けで王子の付き添いをしているから疲れているでしょう。私の方はもういいのよ。旦那様はお疲れのようで休まれたから」  そ...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night77

礼は陽が西に傾いて山に落ちていく間の赤くきれいな夕焼けを哀羅王子が寝ている部屋から見ていた。そして、寝ている哀羅王子に視線を移した。睡眠を誘う薬を飲ませたから王子は眠っているが、時折、うなされるように言葉にならない声を上げて、苦しそうに息を...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night76

再び目を覚ましたのは夕方だった。  春日王子は褥の上で伸びをして、天井をぼんやりと見つめた。  やはり、邸の外も中にも変化はないようだ。  岩城がぼんやりしているのだろうか。園栄に限ってそんなはずはない。何かを考えているはずだ。これが、嵐の...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night75

実言は他に二人の部下を連れて、徒歩で門を出た。従者姿の男三人が出てきたところを、春日王子の間者は見ているだろうが、同じような背格好のみすぼらしい男たちなので、誰が岩城実言なのかわからないだろう。実言は他の男たちと邸の修繕の話をしながら、ゆっ...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night74

「なんだ!」  春日王子はそう言って跳ね起きた。  体を起こしたが、誰もいない。急いで周りを見回してもやはり誰もいなかった。  誰かに呼ばれた気がしたが、それは自分の夢を現実と取り違いしたようだ。 「……ははっ……」  春日王子は落ちそうな...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night73

春日王子は自らも部屋を回って左目に眼帯をした女を探したが、すぐに見つからない。春日王子は、翔丘殿の奥の部屋で待った。しかし、待てども女をそして岩城実言とともに逃げて行った哀羅王子を捕らえたとの報告は来ない。 「まだか。どちらも捕らえられない...
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