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小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night72

実言は哀羅王子の後ろについて、帰りの車の用意でざわめいている車宿の中へ突入した。大勢の人が右往左往していて、牛や馬も入り乱れている。追手は人や馬に行く手を阻まれながら、実言の背中に手を伸ばす。実言は振り向き、手に取った剣の柄で一人の手を払い...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night71

兄である大王が大后とともに部屋を下がって王宮へ戻る輿に乗る頃、春日王子の後ろにそっと影が忍び寄り、その耳に囁いた。  春日王子の顔はみるみる怒りの形相に変わり、冠の中にきれいに収まっている髪は見えないが逆立っているように思えた。無言のまま、...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night70

三輪山に陽が落ちかかる頃、すでに楽団が入って音合わせを終えて、最初に舞う少女たちが立ち位置を確認するのに舞台にあがって、皆で手を握りあって緊張をほぐした。実言たちも控えの部屋で武官の美しい衣装に着替えて、警備の位置についた。  夕闇が翔丘殿...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night69

日良居は案内された部屋で寛いでいたが、心は穏やかではなかった。腰に巻いた、正真正銘の渡すべき物を渡したその達成感はあったが、そのままこの邸に滞在していいものかと迷いがあった。それは、哀羅王子の邸にいる長年連れ添った妻が具合を悪そうにしていた...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night68

間羽芭が忠誠を誓っているのは、地方から出てきて野垂れ死ぬ手前に都で仕えることができたこの邸の主ではないない。間羽芭が心酔しているのは、春日王子である。春日王子のためなら、命を賭けられる。  逐一岩城家の来客を確認していたが、門の前が慌ただし...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night67

間羽芭はこの邸を訪れた者から受けとった物を邸の外にいる仲間に渡さなくてはいけなかった。今、広い庭へ入って追っ手を巻いたが、外に出ようとしても門は固めてあるだろうし、これからどうしたものかと考えた。 「間羽芭!」  自分の部屋へは戻れないため...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night66

「王子、行って参ります」  小柄な老爺の日良居は哀羅王子の部屋で言った。 「ああ。苦労をかける」  哀羅王子は言った。昨日の実言の使者との打ち合わせで、哀羅王子と実言の五条の邸の間にある、大田輪王の邸に行き、そこに待機する実言の従者に警護さ...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night65

月の宴は陰陽によって、満月の日を選んで行われる。その夜に雲がかかるのか、雨が降るのか祈るのみである。  実言は夜明けとともに起きだして、簀子縁から階の半ばまで下りて天を仰いだ。  雲のない空だった。 「今は雨の心配はないわね」  追って簀子...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night64

礼は子供達を寝かしつけた後、自分の寝所へ戻り灯台の元で叔母の去から譲り受けた薬草の本を読んでいたが、いつの間にか眠っていた。夜明けとともに目を覚ますと、とっくに灯台の火は消えていたが、それよりも夫の実言が帰っていないことが気になった。  夫...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night63

そして、佐保藁の春日王子の邸にも、間者が翔丘殿での予行の後の酒席での出来事を報告しに戻った。  春日王子は女人と横になっていたところを、舎人の慌てた声に起こされた。不機嫌に返事をして起き上がると、乱れた寝衣の上から上着を引っ掛けた。女が寝返...
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