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小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night92

できる限り急げ、との号令に弾正台、衛門府、王宮の役人、兵士たちが右に左にと散って、体がぶつかるのも構わずに自分の受け持った仕事をするために走り回っている。大極殿の前に人馬が集まって隊列を作っているところだ。  春日王子の邸から三つの集団が飛...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night91

妻の背中がみるみる小さくなるのを、実言はどこまでも見つめ続けた。小さな体が大きな馬に跨って勇ましく突き進むのを想像すると、今己が成すべきことに集中しなくてはと思った。  あの子を早く自分の元に戻したい。あの子がいなくなってしまっては、自分は...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night90

ゴトゴトキーキーと耳障りな音を立てながら暗い道を進み、車は無事に都から脱出した。  春日王子は車の背面にある小窓から後ろを見て、怪しげな影が近づいてきていないか確認した。何も見えないと分かると、上げた御簾を下ろして、前を向いて座った。  こ...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night89

どれくらいの時刻が経っただろうか。礼は、どれだけ時刻が経とうとも礼はその場を動こうとはしない。  朔は邸の中で何をしているのだろう。……春日王子と何を……。  礼は、膝の上に置いた拳をじっと見つめて、朔が邸から出て来るのを待った。  急に礼...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night88

かたり。  見据えていた扉の錠が開く音がして、哀羅王子は一層緊張した。 「王子」  即座に隣に座っている実言が声をかけた。 「大丈夫だ。心は決まっている」  弾正台の役人の男が扉からこちらに出て来た。 「中へ」  短い言葉で言って、扉の正面...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night87

大王が人に会うための部屋、謁見の間には岩城園栄と弾正台長官の藤原七重、もう一人内大臣の早良高泰がいた。今夜の大王の奏上について、弾正台とは別に証人になってもらうために、園栄はどの陣営の色もついていない内大臣を叩き起こしてこの場に同席させたの...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night86

宮廷内は突然の哀羅王子と岩城実言の登場に蜂の子をつついたように、警備の者たちが右往左往した。  宮廷には宿直に来ていた荒益がいた。宿直の者たちが集まっている部屋に人が飛び込んできて、宮廷内に馬で飛び込んできた者がいる、と口早に語った。それが...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night85

春日王子の邸の中に入って行った朔の車は、すぐに訪いをかけた。  こんな夜に人が訊ねて来たことに邸の者たちは少し驚いた風だったが、暫くすると朔は部屋に案内された。すぐに春日王子に取り次がれて話が通ったのだろう。  佐保藁の邸に初めて来たのは、...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night84

実言と哀羅王子が飛び出していった後、礼は邸の者たちの手当てをしていた。門を飛び出して矢面に立った兵士たち、弓矢隊として弓を射った者たちが相手の弓で負傷してしまった。門を勢いよく閉めるのに、転んで擦り傷を負ったり、膝や腕を打った者たち。そのよ...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night83

「王子、しっかりとつかまっていてください」  実言は闇に向かって叫びながら、前を走る馬を追った。  自分の胴にしっかりと回された王子の腕を感じて、王子を最後まで落とさないように王宮に滑りこむと決意する。  前から矢が飛んで来る。実言の前を行...
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