スポンサーリンク
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night111

目が覚めた。  とてもすっきりとした気分だと、伊緒理は思った。そして、自分の手の先を見たら、しっかりと握っていた。  母の手。  握りなおして、その手の感触をもう一度強く感じた。目を上げると母の横顔が見えた。白い顔。お母様はこんな顔だっただ...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night110

礼は朔の手を握ってじっとその顔を見ている。  朔は息苦しそうにしていて、予断を許さない状況だ。  その日の陽が沈んだころ、礼と朔がいる邸に実言の使いで高瀬が、山での出来事を伝えに来た。礼はその時ばかりは朔の手を放し、邸の外で春日王子の最期を...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night109

「そうだ、買いかぶりも見くびりもしない。騙し合いや仲間の手を借りることもしない。今、ここに出せるものを出し合うしかあるまい。私も、そしてお前もな」  春日王子はにやりと笑って、構えている実言に向かって先手の攻撃を与えた。実言はそれを受けて、...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night108

春日王子は階を上がってきた岩城実言と対峙し、睨み合っている。 「春日王子、大王はあなた様から直接に話を聞きたいとおっしゃっておいでです。どうか私たちと共に都に戻って、大王とお話しください」  実言が言うと、春日王子はすぐさま言い返した。 「...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night107

その時階の下に立つ実言に駆け寄ってきたのは荒益だった。大王軍が山頂の守りを突破したのに乗じて、荒益は礼を部屋に残して大王軍に合流したのだった。その荒益が、実言に言った。 「実言、私に朔を受け取りに行かせてくれ」 「……荒益……しかし……」 ...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night106

朝日は完全に山の上に上がった。  実言率いる大王軍は焦ることなく血気盛んに声を上げて進む。  山頂での決戦。春日王子は物分かりよく降伏するだろうか。  実言は周りの兵士と共に歩いて、山頂へと上がる途中にその思いが頭の中を巡った。 どうか、穏...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night105

礼は邸の中に土足で入った。邸の中は土足の足跡があらゆる方向に向いて無数に散らばっていた。ものが散乱した部屋は、それが戦時であることを現していて、この邸のどこかに朔が寝かされているのかと思うと礼は心を掴まれる思いだった。  一人くらい見張りを...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night104

目が覚めたら、真っ暗でここはどこだろうか、自分はどうしてしまったのだろうか、と混乱した。想像でしか考えられない黄泉の国の入り口はこんなふうに真っ暗で、そこに自分はいるのだろうかと思った。気づくことなくここまで来てしまったことに物悲しさを感じ...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night103

「うわぁあ」  大王軍から叫び声が次々に上がった。  頭上から土や石が落ちてきたかと思ったらその後に矢が降ってきた。反応できる者は身を低くして盾を頭上に上げたが、動転した者は矢がその体を貫き膝から崩れ落ちた。  混乱が収まると、頭上に上げた...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night102

春日王子の騎馬たちはすぐ後ろを追ってくる馬の姿を見て慌てた。 「あれは、大王の馬だ!」  最後尾を走っていた兵士が叫び、皆は戦慄した。とうとう大王軍と対峙する時が来たのかと。 「山へ上がる!」  馬は脚を速めて、山へ上がる道に向かった。 「...
スポンサーリンク