小説 wildflower

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小説 wildflower

Infinity 第二部 wildflower57

翌日、伊良鷲が粥を持って現れた。  礼は守られた場所で休めることに安心して、随分と寝込んでしまった。伊良鷲が、小屋の戸を外した時に、慌てて起きだした。横にいる耳丸は気を失ったように眠っている。  すぐに立ち上がって、入り口に向かった。陽は高...
小説 wildflower

Infinity 第二部 wildflower56

刻は未(午後二時)の頃。陽はどんどんと強くなり、あたりの木々に降り注いだ光が雨粒を照らして美しい。岩畳は陽に水分を吸い取られ、干上がっていく。そこへ、馬の嘶きが聞こえた。その後に、それを囃し立てる人の声が聞こえた。  ……人の声が聞こえた!...
小説 wildflower

Infinity 第二部 wildflower55

次に耳丸が目を覚ました時は、もう朝は過ぎていて、目の前には厚い雲が覆った空が見えた。 「……礼」  近くにいると思って名を呼ぶと、しばらくして草を踏む音がゆっくりと聞こえてきて、礼が現れた。 「気分はどう?」  礼は耳丸の頭を上げさせて膝を...
小説 wildflower

Infinity 第二部 wildflower54

「鳥が屍体を狙っているから、移動させたのよ」  礼は耳丸にもう一度水を飲ませて、山から採ってきた生り物の皮をむいてちぎると口の中に入れた。耳丸は口に入ったその果肉を口の中で潰して甘みを吸った。 「耳丸、傷口を診せてもらうわよ」  そういうと...
小説 wildflower

Infinity 第二部 wildflower53

死後の世界は、どんなものだろう。先に逝ってしまった父や母に会えたりするのだろうか。もし、会えるなら、なぜ、お前がここにいるのだと、驚かせてしまうのだろうか。そうしたら、なんと、言い返したらいいものだろうか。  暗い中を歩いているような気がす...
小説 wildflower

Infinity 第二部 wildflower52

若田城を発って二日目。礼と耳丸は順調に帰り道を進んでいた。  往路での山犬に襲われたことが、礼にはもちろん耳丸にとっても恐怖の出来事であったので、夜は家を見つけては頼み込んでその中や軒先で休ませてもらった。山犬に出くわさないように注意をした...
小説 wildflower

Infinity 第二部 wildflower51

夜が明けた。寝たようで寝てないような気分で耳丸は体を起こした。既に礼も目を覚ましていて、二人で井戸へ行って、身支度をしたり、水筒に飲み水を入れたりした。すでに若田城も動きはじめており、何人かの役人や兵士の男たちとすれ違った。  部屋に戻った...
小説 wildflower

Infinity 第二部 wildflower50

若見は、自分の部屋の入り口が朝仕事に向かう時とは様子が違うことに気づいた。いつも自分がしている戸の立て方ではない。誰かが入り込んだのか?取るものなど何もないのだが。  ゆっくりと戸をずらすと、部屋の中に人影が見える。戸を動かす音で、部屋の中...
小説 wildflower

Infinity 第二部 wildflower49

この村に入ってから三十六日目。耳丸と医者の瀬矢はこの村を発つ。  発つ前に、最後に実言の左腿の傷を見る。傷口は肉がついてほぼ塞がっている。あとは安静にして少しずつ足を動かして慣らしていくしかなかった。瀬矢医師はこのあと実言の世話をする三佐古...
小説 wildflower

Infinity 第二部 wildflower48

十四日目。  礼と耳丸、三佐古は実言のいる横穴で、いつものように体を拭いてやり、肌着を着替えさせ、傷口の具合を見て、水や粥、果物の果汁を飲ませに来た。  礼が傷口を見て塗り薬を塗ると、体を疼く痛みがあるのか、目をつむって静かにしている実言は...
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