小説 Waiting All Night

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小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night77

礼は陽が西に傾いて山に落ちていく間の赤くきれいな夕焼けを哀羅王子が寝ている部屋から見ていた。そして、寝ている哀羅王子に視線を移した。睡眠を誘う薬を飲ませたから王子は眠っているが、時折、うなされるように言葉にならない声を上げて、苦しそうに息を...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night76

再び目を覚ましたのは夕方だった。  春日王子は褥の上で伸びをして、天井をぼんやりと見つめた。  やはり、邸の外も中にも変化はないようだ。  岩城がぼんやりしているのだろうか。園栄に限ってそんなはずはない。何かを考えているはずだ。これが、嵐の...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night75

実言は他に二人の部下を連れて、徒歩で門を出た。従者姿の男三人が出てきたところを、春日王子の間者は見ているだろうが、同じような背格好のみすぼらしい男たちなので、誰が岩城実言なのかわからないだろう。実言は他の男たちと邸の修繕の話をしながら、ゆっ...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night74

「なんだ!」  春日王子はそう言って跳ね起きた。  体を起こしたが、誰もいない。急いで周りを見回してもやはり誰もいなかった。  誰かに呼ばれた気がしたが、それは自分の夢を現実と取り違いしたようだ。 「……ははっ……」  春日王子は落ちそうな...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night73

春日王子は自らも部屋を回って左目に眼帯をした女を探したが、すぐに見つからない。春日王子は、翔丘殿の奥の部屋で待った。しかし、待てども女をそして岩城実言とともに逃げて行った哀羅王子を捕らえたとの報告は来ない。 「まだか。どちらも捕らえられない...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night72

実言は哀羅王子の後ろについて、帰りの車の用意でざわめいている車宿の中へ突入した。大勢の人が右往左往していて、牛や馬も入り乱れている。追手は人や馬に行く手を阻まれながら、実言の背中に手を伸ばす。実言は振り向き、手に取った剣の柄で一人の手を払い...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night71

兄である大王が大后とともに部屋を下がって王宮へ戻る輿に乗る頃、春日王子の後ろにそっと影が忍び寄り、その耳に囁いた。  春日王子の顔はみるみる怒りの形相に変わり、冠の中にきれいに収まっている髪は見えないが逆立っているように思えた。無言のまま、...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night70

三輪山に陽が落ちかかる頃、すでに楽団が入って音合わせを終えて、最初に舞う少女たちが立ち位置を確認するのに舞台にあがって、皆で手を握りあって緊張をほぐした。実言たちも控えの部屋で武官の美しい衣装に着替えて、警備の位置についた。  夕闇が翔丘殿...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night69

日良居は案内された部屋で寛いでいたが、心は穏やかではなかった。腰に巻いた、正真正銘の渡すべき物を渡したその達成感はあったが、そのままこの邸に滞在していいものかと迷いがあった。それは、哀羅王子の邸にいる長年連れ添った妻が具合を悪そうにしていた...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night68

間羽芭が忠誠を誓っているのは、地方から出てきて野垂れ死ぬ手前に都で仕えることができたこの邸の主ではないない。間羽芭が心酔しているのは、春日王子である。春日王子のためなら、命を賭けられる。  逐一岩城家の来客を確認していたが、門の前が慌ただし...
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