小説 Waiting All Night

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小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night87

大王が人に会うための部屋、謁見の間には岩城園栄と弾正台長官の藤原七重、もう一人内大臣の早良高泰がいた。今夜の大王の奏上について、弾正台とは別に証人になってもらうために、園栄はどの陣営の色もついていない内大臣を叩き起こしてこの場に同席させたの...
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Infinity 第三部 Waiting All Night86

宮廷内は突然の哀羅王子と岩城実言の登場に蜂の子をつついたように、警備の者たちが右往左往した。 宮廷には宿直に来ていた荒益がいた。宿直の者たちが集まっている部屋に人が飛び込んできて、宮廷内に馬で飛び込んできた者がいる、と口早に語った。それがど...
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Infinity 第三部 Waiting All Night85

春日王子の邸の中に入って行った朔の車は、すぐに訪いをかけた。 こんな夜に人が訊ねて来たことに邸の者たちは少し驚いた風だったが、暫くすると朔は部屋に案内された。すぐに春日王子に取り次がれて話が通ったのだろう。 佐保藁の邸に初めて来たのは、この...
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Infinity 第三部 Waiting All Night84

実言と哀羅王子が飛び出していった後、礼は邸の者たちの手当てをしていた。門を飛び出して矢面に立った兵士たち、弓矢隊として弓を射った者たちが相手の弓で負傷してしまった。門を勢いよく閉めるのに、転んで擦り傷を負ったり、膝や腕を打った者たち。そのよ...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night83

「王子、しっかりとつかまっていてください」 実言は闇に向かって叫びながら、前を走る馬を追った。 自分の胴にしっかりと回された王子の腕を感じて、王子を最後まで落とさないように王宮に滑りこむと決意する。 前から矢が飛んで来る。実言の前を行く馬に...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night82

実言が空を睨みつけて念じたことが功を奏したのか、戌刻(午後八時)には雲が出て来た。「月が隠れます」 実言の代わりに、少し後ろで一緒に空を見上げていた安和也が言った。「そうだな。願った通りになった」 実言は目を細めた。「王子に準備をしてもらお...
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Infinity 第三部 Waiting All Night81

春日王子は階の一番上に立って空を見上げた。 西に陽が沈みかけ、東の空にはうっすらと月の姿が見えた。 もう都の上空には春日王子が謀反を起こすという空気が渦巻いている。この空気を無力にするには、春日王子がその意思はないことを示すべきだ。しかし、...
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Infinity 第三部 Waiting All Night80

差し出された椀の中には、ほんの少しの粥が入っているが、哀羅王子はそれを全部食べ切るのに苦労していた。礼は粥の汁だけでもすすってもらおうと思うが、哀羅王子は口を閉じて顔を背ける。 礼は、後ろにいた侍女に井戸の水で冷やしていた梨をむいて、哀羅王...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night79

月の宴から三日目。荒益は、少し遅くに宮廷へと上がった。 平和ないつも通りの日常だと、都に住まう大多数は思っている。しかし、一歩宮廷の中に入ると、そこここで役人たちはくっつきそうなほど顔を寄せ合ってひそひそと話している。その光景は一組ではなく...
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Infinity 第三部 Waiting All Night78

礼は静かに部屋の中に入ったが、すぐに気づいた侍女が言った。「こちらは大丈夫ですわ」 礼は侍女の隣に座った。「あなたは続けで王子の付き添いをしているから疲れているでしょう。私の方はもういいのよ。旦那様はお疲れのようで休まれたから」 そこで礼は...
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