小説 Waiting All Night

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小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night107

その時階の下に立つ実言に駆け寄ってきたのは荒益だった。大王軍が山頂の守りを突破したのに乗じて、荒益は礼を部屋に残して大王軍に合流したのだった。その荒益が、実言に言った。「実言、私に朔を受け取りに行かせてくれ」「……荒益……しかし……」 実言...
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Infinity 第三部 Waiting All Night106

朝日は完全に山の上に上がった。 実言率いる大王軍は焦ることなく血気盛んに声を上げて進む。 山頂での決戦。春日王子は物分かりよく降伏するだろうか。 実言は周りの兵士と共に歩いて、山頂へと上がる途中にその思いが頭の中を巡った。どうか、穏やかな話...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night105

礼は邸の中に土足で入った。邸の中は土足の足跡があらゆる方向に向いて無数に散らばっていた。ものが散乱した部屋は、それが戦時であることを現していて、この邸のどこかに朔が寝かされているのかと思うと礼は心を掴まれる思いだった。 一人くらい見張りを置...
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Infinity 第三部 Waiting All Night104

目が覚めたら、真っ暗でここはどこだろうか、自分はどうしてしまったのだろうか、と混乱した。想像でしか考えられない黄泉の国の入り口はこんなふうに真っ暗で、そこに自分はいるのだろうかと思った。気づくことなくここまで来てしまったことに物悲しさを感じ...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night103

「うわぁあ」 大王軍から叫び声が次々に上がった。 頭上から土や石が落ちてきたかと思ったらその後に矢が降ってきた。反応できる者は身を低くして盾を頭上に上げたが、動転した者は矢がその体を貫き膝から崩れ落ちた。 混乱が収まると、頭上に上げた盾の隙...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night102

春日王子の騎馬たちはすぐ後ろを追ってくる馬の姿を見て慌てた。「あれは、大王の馬だ!」 最後尾を走っていた兵士が叫び、皆は戦慄した。とうとう大王軍と対峙する時が来たのかと。「山へ上がる!」 馬は脚を速めて、山へ上がる道に向かった。「逃がすな!...
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Infinity 第三部 Waiting All Night101

縄を解かれて放たれた犬のように、背の高い草の続く林の中を実言の斥候は走りだした。その後を馬に乗った実言たちが追う。 途中、絶命している二人の男を見つけた。一人は知らない男だが、もう一人は実言の下で働いている男だった。「軒(のき)尾(お)……...
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Infinity 第三部 Waiting All Night100

馬に乗って自陣に戻った兵士はすぐに実言に報告した。報告を聞いた実言は迷いなくその場所に一団全員を向けることを決断し、号令を出した。 その場にいた騎馬隊はすぐに馬に跨り、駆けて行った。小さな目印を頼りにその背の高い草むらの中に進み行った。途中...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night99

実言たち大王の軍団は湖のほとりの邸から、細心の注意を払って進んだ。どこで春日王子の一団を発見して、戦になるかわからないからだ。「ここら辺りには、春日王子を支持する者はいるのか?王子には各地に懇意にしている豪族がいるだろう。そこの子女を王宮や...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night98

夜明け前、邸に女を一人置いて、春日王子たちは出発した。 春日王子は出発前に朔の顔色があまりにも悪いので、心配している。背中にすがる体はあまりにも軽い。朔に何を聞いても、旅は初めてだからと言って、その後は迷惑をかけてすまないと謝るばかりだった...
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