小説 STAY(STAY DOLD)

スポンサーリンク
小説 STAY(STAY DOLD)

New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第四章9

淳奈の部屋で子守の苗と一緒に寝顔を見ていた芹のところに、侍女の槻がやって来た。それで、実津瀬が帰って来たのだと分かった。  芹は淳奈を苗に任せて、槻と一緒に夫婦の部屋に戻って行った。  庇の間に入ったところで、反対側の簀子縁から静かな足音が...
小説 STAY(STAY DOLD)

New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第四章8

いつものように侍女の住居の前まで来た朱鷺世は指笛を吹いて露を呼び出した。  その日も露は台所から搗き米をかすめ取って柿の葉に包んだものを朱鷺世のために用意していたから、指笛が聞こえたらすぐに出て行った。  朱鷺世は無言で住居裏の森になった庭...
小説 STAY(STAY DOLD)

New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第四章7

「朱鷺世!手だ!手!」  淡路の大声が稽古場に響いた。淡路の後ろには楽団の長である麻奈見が腕組して朱鷺世の舞を見ている。  「手を意識したら、次は足が疎かになっている!」  淡路は朱鷺世に近寄って手にしていた短鞭を振るった。  空を切った短...
小説 STAY(STAY DOLD)

New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第四章6

石の床の続く先には、椅子が三脚置かれていて、左端の椅子の後ろには雅樂寮の頭である麻奈見が立っていた。 「麻奈見殿!」  実津瀬は声を上げた。  稽古場には行くが、それほど熱心に舞うわけではないため、最近は麻奈見を避けている。会うのは久しぶり...
小説 STAY(STAY DOLD)

New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第四章5

翌日、実津瀬は中務省の館で仕事をした後、佐保藁の宮へと向かった。  宮廷の西北に位置する佐保藁という場所にある宮は、元は大王の邸であったが、いつの時か大王の兄弟に与えられ、それから代々王族が受け継いで住んできた宮である。先代大王の弟宮である...
小説 STAY(STAY DOLD)

New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第四章4

五条の離れの部屋にこの邸の家政を一手に預かる忠道が来た。 「お帰りなさいませ、実津瀬様」  昼間、実津瀬が邸に帰って来たのを待っていたかのように現れたのだ。 「うん。今帰って来たところ」 「どこか寄り道でもされていたのですか?」  芹は奥の...
小説 STAY(STAY DOLD)

New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第四章3

「あー、おいしかったですね」  井は言って、自分のお腹をさすった。  食堂は食事が終わった後、少しの間おしゃべりをしている者が多くてにぎわっていたが、それぞれの時間を過ごすために一人、二人と食堂を出て行く者がいた。  これからは各自の自由時...
小説 STAY(STAY DOLD)

New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第四章2

その時。 「牧さん、言ったのは私よ」  不意に横から声がした。井の面前に立つ直前に、牧はその声の方に顔を向けた。  牧の剣幕に慄いた者たちが左右に分かれて重なった人垣の後ろから人をかき分けて、蓮が進み出た。 「今日、私と一緒に薬草を倉の棚に...
小説 STAY(STAY DOLD)

New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第四章1

蓮は摘んだ薬草を筵の上で干していたものを倉の中に納める作業をしていた。倉から外へ出た時に、ふっと香る梅の花の匂いが鼻腔をついた。 「蓮さーん」  倉の前で立ち止まってその香しい匂いに浸っていると、遠くから自分の名を呼ばれて顔を上げた。呼んで...
小説 STAY(STAY DOLD)

【小話】独りの実津瀬 〈第ニ部STAY(STAY GOLD)〉

妻と息子を別れて、供を連れて都に帰る。  別れ際は……。  母に抱かれて遠ざかる父を見る息子は、その距離が離れるにつれて表情を曇らせた。 「淳奈、お父さまとはしばらくさよならね。たくさんねんねしたら、また会いに来てくださるわ」 「とうしゃま...
スポンサーリンク