小説 STAY(STAY DOLD)

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New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第六章9

「蓮!れーん!」  伊緒理は腹の底から力いっぱい声を出して蓮を呼んだ。 「れーん!返事をしておくれ!」  声を出した後は、耳を澄ました。自分の声を聞いた蓮が応えてくれる、という希望を持って。  未刻(午後二時)を回った頃だった。  長年傍で...
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New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第六章8

去の館に避難してきた者たちは皆、雨に打たれることなど気にすることなく、本道を遡ってくる水が迫って来る前に立ち止まって、声もなく目の前の水の流れを見つめている。  昨日まで目の前に見えていた光景は、もう記憶の中にしかないのだ、と黒い水を前にし...
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New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第六章7

裏道の警護をしていた男たちの一人は立っていられない程に動揺している牧の肩を抱いて、もう一人は先に立って浅い川となった坂道を登っていった。 「見習いの蓮という女人が誤って水の中に落ちて流された!」  という話は、見習い仲間たちの中に瞬く間に広...
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New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第六章6

蓮と牧は笠と蓑を着けて、並んで坂を下りて行った。  去の館には本道と呼ぶ表の道とは別に裏道がある。名前の通り、邸の裏に辿り着く道で、村人は通常使わないが、このような非常事態であれば、住人達は裏道も使うはずだ。蓮と牧は裏道を登って来る村人を助...
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New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第六章5

真夜中に大王はひとり、王宮の奥にある神殿に入って膝をつき、祈りと供物を捧げた。  束蕗原でも去が館の裏に作った祭壇に向かって祈り、蓮も祈った。井や鮎たち見習いも、そして束蕗原に住む者は皆、老いも若いも関係なく祈った。  雨を降らせてください...
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New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第六章4

その川幅いっぱいまでに満ちていた水はどこに行ったのか。川の中央にちょろちょろと水の筋があり、かろうじて水が流れている。魚たちはどこへ行ってしまったのだろうか、前まで見えていた魚の泳ぐ姿も今は見えない。  去は病み上がりの体を押して、山の神、...
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New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第六章3

夕暮れ時、男たちが川の淵に篝火を置いて、川に入って水浴びをする。着ているものを全部脱ぎ捨てて、汗を洗い流すのだった。 「あれ、まだ男の人の声がする」  井が言った。 「今日も暑くて、たくさん汗をかいたわ。水の中に入るのは気持ちいいでしょうね...
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New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第六章2

束蕗原の晩夏。  都も暑かったが、ここ束蕗原も暑い。  都では小さな子たちと水遊びをして涼を取っていたが、ここではいち見習いの身分だから涼を取る暇はない。同じように暑さで弱る植物の世話をし、薬草を作り、怪我人や病人の世話をする。汗が滴り落ち...
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New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第六章1

蓮は同僚の井と夕餉を食べ終えて、食堂の扉の前まで行った。 「雨はどうなったでしょうか?」  後ろを歩く井が言った。 「夕立ね。とてもひどい雨だった」  蓮が答えて、扉を押した。  夕方、急に空が真っ暗になり、雨雲が束蕗原を覆った。そして、ぽ...
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New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第五章15

「さすがは、岩城一族でいらっしゃる。多様な才能をお持ちだ。臣下の中でも舞楽、管弦が好きな者は多くいますが、あのような舞を舞う者がどれだけいるかといったら、それは、皆無。印象深い舞でした」  身なりを整えて宴会の席に着いた実津瀬に、隣に座って...
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