小説 あなた

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New Romantics 第一部あなた 第一章13

「実津瀬!」 今、この邸にいるはずのない人の声がして、実津瀬は寝転がっていた体を起こした。 二日続けて塾を休むのは良くないと、実津瀬は早朝に宮廷の見習いの仕事の後、塾に行った。 昨日、真面目な実津瀬が来なかったこと心配してか、多くの人から声...
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New Romantics 第一部あなた 第一章12

今日、父が束蕗原に行っていてよかった。 実津瀬は、心からそう思った。 邸に家族は誰もいない。自分の様子が変でもそれを何かといってくる者はいないのだ。 雪と別れる前に背を向けて袴をつけ直し、脱いだ袍に袖を通して帯を締めた。雪は、単衣を肩に掛け...
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New Romantics 第一部あなた 第一章11

束蕗原に岩城実言が到着した。従者二人を連れて、馬を飛ばして都の北東にあたるこの地に来たのだ。 去の邸の離れにいる礼や蓮たちに、館の使用人からすぐに連絡が入った。宗清は久しぶりに会う父の到着に喜び、簀子縁をわき目も降らずに走って行った。それを...
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New Romantics 第一部あなた 第一章10

雪が言った明後日のその日、実津瀬は雪と会うということが決まっているだけだというのに、変に体に力が入ってしまう。意識しなければ、右手右足を同時に出して歩いてしまいそうになる。 女人に心を囚われるとこんなことになってしまうのか、と実津瀬は内心自...
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New Romantics 第一部あなた 第一章9

翌日から、蓮は母と一緒に日の出と共に去の薬草園で薬草を摘み、昼間は妹弟たちの世話をし、夕暮れまでの一時、薬草について書かれた書物を写した。 蓮の書く字は美しく読みやすい。それは、去もたいそう褒めてくれるので、束蕗原では蓮は去のためにも本を写...
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New Romantics 第一部あなた 第一章8

束蕗原に向かうため、夜明けとともに皆が邸の主人の部屋に集まった。実言がみんなの顔を見て寂しそうな顔をしていた。実津瀬も宮廷に出仕する前に、顔を出した。弟妹たちには昨夜たくさん話をしたので、顔を見たかったのは母だった。「お母さま、お体に気を付...
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New Romantics 第一部あなた 第一章7

実津瀬の生活は朝早くに宮廷に出仕して、見習いとしての雑事をこなし、そこから宮廷近くに開かれた私塾で講義を受ける。異国から来た最新の書物についての知識を得られると人気である。その講義が終わると、実津瀬は再び宮廷に帰って、もし見習いの仕事が残っ...
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New Romantics 第一部あなた 第一章6

新しい年を迎えるに当たって、岩城実言の邸では邸に仕える者は従者侍女、その子供に至るまで皆の衣装を新調した。皆、箱を開ける前から新しい衣装に心を躍らせた。元旦の朝には真新しい衣装に袖を通し、邸の主人の部屋へ挨拶に行った。 実言は妻の礼を隣に座...
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New Romantics 第一部あなた 第一章5

新しい年を迎えるにあたって、実津瀬は宮廷に片隅にある稽古場で一人汗を流していた。それは、新年の行事で舞を舞うのに、恥ずかしいものを見せられないという使命感からだった。 日も暮れて、松明が必要になるというところに我に返ったように練習をやめて、...
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New Romantics 第一部あなた 第一章4

長く続く簀子縁を歩いてその角を曲がると、伊緒理の部屋の入り口につく。蓮はその入り口に近づくと、胸が痛くなる。これは嫌な痛みではない、嬉しさの伴う痛み。 蓮は角を曲がって、顔を上げた。「ああ、蓮」 庇の間から簀子縁に出てきた伊緒理が蓮を見て近...
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