小説 あなた

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New Romantics 第一部あなた 第ニ章14

月の宴の前日。  実津瀬は予行のために塾が終わると、宴の会場となる夫沢施の館に向かった。すでに宮廷の楽団が組みあがった舞台の上を行ったり来たりしている。  実津瀬が舞台の下まで行くと、師匠の麻奈見が上で指示をしている姿が見えた。 「麻奈見様...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章13

雪と会うことを許すかのように降り続いた雨は止んだ。晴れ渡った青い空が頭上に広がった。いつもの約束の場所に先に来たのは実津瀬だった。稽古場で久しぶりに舞の練習をしてから、速足でここまで来たのだった。  随分と間が空いたから雪に会えると思うと気...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章12

久しぶりに本家から当主の蔦高が実言のところに来た。父について稲生と鷹野も一緒にやってきた。追って鷹取景之亮が実言の邸を訪れたので、何かしらの密談があるのかもしれない。しかし、実津瀬はその内情を知らされていない。  実津瀬の部屋で実津瀬、稲生...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章11

そんな出来事があった翌日、次に本家の稲生が事件を起こす。  少しばかり前に本家の庭に同年代の男女を招いて小さな宴を開いた。宴の本当の目的は稲生が心を寄せる和良家の娘、絢と会うためのものだった。皆が楽しく談笑しながら庭を愛でている間に二人はど...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章10

「実津瀬、夏の宴で舞を舞う依頼が来たよ」  実津瀬は机を出して書物を読んでいたところに、ふらっと現れた父の実言から言われた。  宮廷楽団と一緒に舞の練習をしていた際、楽団を引っ張る楽長の麻奈見からそれとなく舞の依頼について言われていたから、...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章9

宮廷での行事や宴が立て込んで、下働きの者を入れたためにいつも使っている宿舎の空き部屋を探し当てるのに少し苦労した。  やっと見つけた部屋で、誰にも聞かれないように、とひそめてもそれは静かな熱とともに漏れる。  実津瀬は雪に足を開かせて自分の...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章8

蓮は机の前に座って、束蕗原から届いた薬草の本を開いていたが、ぼんやりと前を見ていた。  誰のために写本をしたらいいのか。それは、母のためであり、束蕗原の去のためであるのだが、気持ちが入らない。  蓮は筆を持つ気にならず、膝の上に両手を置いて...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章7

桜の花びらが枝から離れて岩城実言邸の大きな池に浮かんだ。  束蕗原から来ている医術見習いの女と蓮は薬草園の隣に建っている小屋で薬草作りをしていた。二人ですり潰す作業をして小屋から出ると、薬草園の裏から宗清の威勢のいい声が聞こえた。実津瀬が舞...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章6

気が進まないといいつつも、その日が来ると蓮はそわそわして朝から落ち着かない。朝餉の粥も半分しか喉を通らなかった。  父から会わせたい男がいると言われてから、蓮は毎日衣装を入れた箱の前に座って、開けては中を出して並べ、再び入れたりしている。昨...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章5

蓮は束蕗原から届いた薬草に関する本を写すために机の前に座っていた。筆を取ったけど、なかなか紙の上に筆を置く気にならなかった。  それは、兄の実津瀬の様子がおかしいことが気になっているからだ。  どうしたのだろう?  部屋に閉じこもって、舞や...
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