小説 あなた

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New Romantics 第一部あなた 第ニ章24

陽光がさんさんと奥の寝室にも届くようになったころ、蓮は目を覚ました。目だけであたりを窺うと、どうやら褥の上に寝ているようだ。  なぜ自分が景之亮の寝ていた場所に寝ているのか?と驚き、体を起こした。すると、昨夜の激しい動きで手足やお腹が痛いし...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章23

東の山の稜線からは白い光が見える。夜の終わりの中を景之亮は右手で蓮を庇い、門から外に出て歩く。途切れ途切れに蓮に向かって景之亮は声を掛ける。 「……怖い思いをさせてしまいましたね。男が蓮殿と鉢合わせになるとは思わず…私はとんだ過ちを犯すとこ...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章22

階下で男の叫び声がした。  実津瀬は一度、雪の胸から顔を上げた。  自分を追いかけている男たちが扉の前にいたはずだが、叫び声が上がるとは仲間割れでも起こったのだろうか?  じきに男たちがこの倉の中をくまなく探して、実津瀬が隠れているこの場所...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章21

景之亮の登場で、扉の前の男たちは扉を開ける者と、景之亮に応戦する者に別れた。景之亮は鍔を合わせた男を近くの幹に押し付けて、扉を開けようとしている者たちの様子を横目で見た。二人の男が扉に肩をぶつけ合って突破しようとしている。たわむ扉だが、まだ...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章20

景之亮は樹の陰から倉の扉の前を盗み見た。  もし扉が突破されたら実津瀬が見つかるのは時間の問題だが、こうして倉の前で足止めになっているのは景之亮としてはありがたかった。先ほど弓矢が敵に命中した手ごたえがあった。傷を負わせて戦力を削ぐことがで...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章19

はぁはぁはぁ…  実津瀬は自分の息の音が大きくて追跡者に居場所がわかってしまうと心配して、大きく息をしないようにと思ったが、傷を負った雪を抱いて精一杯走るとどうしても息が上がる。  実津瀬は宮殿の裏にある倉が立ち並ぶ区域に逃げ込んだ。倉の裏...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章18

あれは、新年の行事も終わって宮廷全体がほっとして花の季節前の少しばかりのゆったりとした時間を過ごしているときに、岩城実言が左近衛府の詰所にふらりと現れた。岩城実言の顔はよく知られていて、すれ違う者は皆、小さな会釈をして行く。  景之亮は机に...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章17

実津瀬は使用人の寝泊まりに使っている棟の中を端まで走ると、簀子縁に出て近くの階を下りた。  表と裏の門以外に夫沢施の館から出る門はあっただろうか。夫沢施の館は全てを高い塀に囲まれていて簡単には出られない。使用人が近道する通用門があっただろう...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章16

夫沢施の館の裏門を入った実津瀬は迷わず左手に進み、母屋の裏にある使用人たちの寝泊まりする棟の方に進んだ。宴が終わった後の喧騒が右側にある台所や支度部屋から聞こえてくる。前日からの準備と本番の緊張から解き放たれた使用人たちは、残った料理や酒に...
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New Romantics 第一部あなた 第ニ章15

夫沢施の館で行われる夏の宴は、心配していた天気にも恵まれて夕闇の頃には夫沢施の館に大王、大后を始め王族を迎えることができた。  ちょうど西に赤く焼けた空が追いやられて、東の空からは濃い闇に覆われた頃、篝火の爆ぜる音の中、大王と大后が正面の席...
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