小説 あなた

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New Romantics 第一部あなた 第三章15

「芹様!」 慌てて芹の一歩前を歩いていた従者は手を出した。突き出た石に足を取られて前のめりになった芹の体をすんでのところで受け止めた。「ああ、ぼおっとしていたわ」「歩きなれないので、仕方ありません」 そう言って、従者は芹がしっかりと立つまで...
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New Romantics 第一部あなた 第三章14

佐田家の別邸は都の南にあり、邸の周りはのどかで、小さな森が点在し、作物を育てている畑があった。そのため、人通りも少なく、芹は畑を作る母親と子供の二人連れとすれ違っただけで、後は誰とも出会わなかった。 従者が門を入って訪いを告げると、すぐに人...
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New Romantics 第一部あなた 第三章13

芹の心は落ち着かない。 それは、岩城実津瀬から「待っていて」と言われたこと……。待っていたくないのに、待つしかない。 毎日毎日、誰かが部屋に入ってくると、何かあるのではないかとびくびくしている。 今も、簀子縁をこちらに歩いてくる音に、もしや...
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New Romantics 第一部あなた 第三章12

翌日、実津瀬は夜明けとともに起きると、昨日と同じように宮廷見習いとして働いて、一旦邸に帰って来た。身だしなみを整えていると、蓮が庭から声を掛けてきた。「あれ、実津瀬?塾は?」「今日は行かない。今から出掛けるんだ」「え?どこへ?」「ちょっとね...
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New Romantics 第一部あなた 第三章11

「えー!実津瀬!どういう風の吹き回しだ?」 塾の帰り、鷹野は実津瀬の言葉に驚きの声を上げた。 「笛を吹きに行きたくなってね」 実津瀬が明日の踏集いに一人で行くと言い、その理由を訊ねた答えが先ほどの笛が吹きたいだった。それは嘘だと、鷹野は疑い...
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New Romantics 第一部あなた 第三章10

その翌日、景之亮が実言邸にやってきた。景之亮が来たことは侍女たちを通じてすぐに蓮に伝わっているが、景之亮は例によってこの邸の主人である実言に挨拶をしてから蓮の部屋に来るため、すぐに会えるわけではない。 昨日、景之亮様は王宮と宴会の場である佐...
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New Romantics 第一部あなた 第三章9

王子たちが目の前を通り過ぎて行って、頭を上げかけた時に隣の藍が肘で蓮を小突いた。何事かと思って藍を見ると、藍は王族が歩いて行った向こうを見ている。蓮もゆっくりと藍の視線の先を見ると、王族がそれぞれ輿に乗るのを待って見守っている景之亮の姿があ...
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New Romantics 第一部あなた 第三章8

佐々良の宮は多くの人が出入りして、宴の準備が着々と進んでいた。 蓮と藍は宮の庭に作られた宴の舞台の周りに張られた幕を持ち上げて覗き見た。「まあ、立派な机!机の上の敷物もとても美しい模様!」 二人は感嘆の声を上げた。「お料理もきっと豪華でしょ...
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New Romantics 第一部あなた 第三章7

「蓮!」 庭で呼ばれた蓮は首だけ庭に向けて返事をした。「待って!もう少し待って!」 やっと決めた帯を手早く結ぶ。同じ部屋にいた榧と珊は簀子縁まで出て、蓮の名を呼ぶ本家の娘、藍と付き添いの従者を迎えた。 都の西にある庭園での宴会の手伝いに行く...
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New Romantics 第一部あなた 第三章6

曲が終わると、女人は池のほとりに座り込んだ。実津瀬も、笛を胸に閉まって女人の左隣りに腰を下ろした。女人は実津瀬の行動に驚いたようで、その身を少し右に寄せた。 そんな動きが女人は姉妹だけで身近の男は父親だけのように感じさせた。 しかし、実津瀬...
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