小説 あなた

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New Romantics 第一部あなた 第三章25

芹は掴まりたくなくて一生懸命走った。しかし、もう息が切れて足は前に進まず、立ち止まらずにはいられなかった。  はぁはぁはぁ……  芹は樹の幹に手を置いて、息が整うのを待った。  房ったら、どうしてわかってくれないのだろう。再びあの人と会わせ...
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New Romantics 第一部あなた 第三章24

手の甲に当てる武具を取り付けるのに、鷹野は難儀していた。 「う~ん、この紐はどこにつながるのかな」 「鷹野、ここに通すんだ」  既に狩り姿に衣装を整えた実津瀬が、鷹野の腕から垂れている紐の先を取って、腕の下を通して反対側の紐通しの穴へと入れ...
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New Romantics 第一部あなた 第三章23

「実津瀬!景之亮様がいらっしゃったわよ」  簀子縁を通って、実津瀬の部屋の前まで来た蓮が叫んだ。  部屋の中には実津瀬の他に稲生と鷹野もいた。  遅れて景之亮が大きな体を現した。実津瀬たち三人は簀子縁まで出て、景之亮を迎えた。 「景之亮殿、...
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New Romantics 第一部あなた 第三章22

それから芹は房にたしなめられたためか、奥の部屋に籠らず、日中は庇の間まで出てきて縫い物に勤しんでいる。  一生懸命に手を動かしているが、手が止まるとしばらくぼうっと外を眺めている。岩城実津瀬と出会う前も左手の残った親指と膝を使って縫い物をし...
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New Romantics 第一部あなた 第三章21

「か……」  景之亮様、とその名を呼ぼうとしたのだが、それよりも早く景之亮は蓮を抱き締めた。  いつものように主の実言と少しばかり話をして、蓮の部屋へと渡ってきた。そこに足音を聞きつけて庇の間に出迎えた蓮をその場で抱き上げたのだ。 「あっ…...
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New Romantics 第一部あなた 第三章20

二日前から妹が、気分転換に外出しようとしつこく誘ってきたのだ。踏集いの時期も終わって、外に出ることもなくなってしまった。紅葉を楽しみながら木の実を拾いに行こうと。父親の機嫌が悪く、部屋にいたら当たられてしまうので、妹とならいいかと出てきたの...
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New Romantics 第一部あなた 第三章19

塾が終わった後、本家の稲生と鷹野と一緒に帰ったが、本家の門の前で二人と別れるはずが鷹野は実津瀬から離れない。 「ん?どうしたの」 「実津瀬と話があるから、一緒に行く」  と鷹野が言う。  実津瀬は特に何も言わず、門の中に入る稲生に手を上げて...
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New Romantics 第一部あなた 第三章18

邸の蓮の部屋で二人きりといっても、どこに他人の目があるかわからない。だから、おそるおそるの気持ちもあるのだが、ここにはその心配はない。  景之亮が蓮に体を向けた。蓮が景之亮を見上げると、景之亮は右頬を蓮の左頬に寄せた。  最初の頃は、髭の伸...
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New Romantics 第一部あなた 第三章17

厩に行くと、鞍を載せた二頭の馬の準備がしてあった。  景之亮は蓮が馬に乗るのを手助けし、馬上で蓮の体が落ち着くと、自分はひらりと軽い身のこなしで馬上へと上がった。  さすがに警備の仕事で馬に乗り慣れているだけある。美しい乗り姿に蓮は見惚れて...
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New Romantics 第一部あなた 第三章16

珍しく実津瀬は机について書物を読んでいた。  新年を迎えたら、正式に宮廷に出仕すると言われている。今はより心して勉学に励む時だと、真面目に取り組んでいた。そこに、静かに簀子縁を歩いてくる音がする。  実津瀬は身が入らないせいか、すぐに気づい...
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