小説 あなた

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New Romantics 第一部あなた 第三章35

実津瀬は自分の方に顔を向けている芹の寝顔を見つめた。  昨夜、芹は実津瀬がその体に加える愛撫に、最初は体を強張らせた。それは体を触られることに慣れていないだけで、頭を枕に置いて話をし、お互いどこか体に触れて、撫ぜてをしていると芹の緊張も解け...
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New Romantics 第一部あなた 第三章34

すっかり夜風が冷たくなった。晩秋の夜、芹は庇の間で蔀戸を上げた窓からの月明かりと灯台の小さな火を頼りに縫物をしていたが、頭の中では実津瀬のことを考えていた。  実津瀬との手紙のやり取りは、一日交替で途切れることなく送りあっていたのに、今日は...
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New Romantics 第一部あなた 第三章33

景之亮を見送った蓮は、褥の上で目を瞑っているといつの間にか眠ってしまった。  目が覚めたのは、女人の控えめな声が聞こえたからだ。 「失礼します。もし……お目覚めでございますか?」  蓮は眼を開けた。几帳の後ろに人影が見えて、飛び起きた。 「...
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New Romantics 第一部あなた 第三章32

夜明け前に景之亮は目が覚めた。腕の中には規則正しい寝息を立てている蓮がいる。薄暗い部屋の中で、少女のようにあどけない寝顔にしばらく魅入った。  それから、ゆっくりと蓮の体の下に引いている腕を抜いて、自身の体を起こした。  宮廷へ出仕するため...
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New Romantics 第一部あなた 第三章31

もう秋も深まって肌寒い日もあるのに。  今日は暑いな。  病み上がりの景之亮は、まだ自分が熱っぽいのかと疑ったが、恢復した今朝同様に体は軽く、だるさもない。そこでこの部屋の中が暑いのだと気づいた。  夜風にあたり過ぎるとまた風邪を引いてしま...
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New Romantics 第一部あなた 第三章30

足の痛みは完全には引かないが、いつまでも寝ていられないと実津瀬は、奥の褥を引いた部屋から三方の御簾を上げさせた隣の庇の間まで這って行って、秋の深まった庭の景色を眺めたり、やって来た小さな弟妹と話をしたりとゆったりとその日を過ごした。  小さ...
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New Romantics 第一部あなた 第三章29

「待って!もう少しゆっくりと」  よどみなく言葉を発する実津瀬に蓮が待ったをかけた。 「ああ、悪い」 「ええっと、あなたはもう起き上がって生活していると聞いて、安心しました。私は足の痛みが引かず、もう少し褥の上で横になっています。あなたに会...
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New Romantics 第一部あなた 第三章28

足が限界だ。  広い原っぱを踏集いの広場の方へ走っていた実津瀬は何にもないところで躓いた。芹を落とさないように、その場に崩れ落ちるようにしゃがんでから、体を前に倒した。 「はぁはぁはぁ」  息をするのも忘れてただただ走って逃げてきた。でも、...
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New Romantics 第一部あなた 第三章27

踏集いの広場まで来た実津瀬は、池へと馬を進めた。  房の話では、芹が戻って来た時のために供の侍女を待たせていると言っていた。もしかしたら、という淡い期待を抱いたのだ。  芹と並んで座っていた池のほとりに辿り着くと、対岸に女人が立っているのが...
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New Romantics 第一部あなた 第三章26

話の中心にいるのは、岩城本家の鷹野だ。  鷹野は今日の狩りの集合場所に集まった者たちを引き連れるかたちで、狩りの主戦場となる甘樫の山に向かっていた。  集合場所を出発する前に試射をした時、武術は苦手な鷹野が立て続けに的を射抜いたのだった。見...
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