小説 wildflower

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Infinity 第二部 wildflower7

相変わらず、耳丸の視線は厳しい。礼は耳丸に好かれたいとは思わないが、苦々しげな視線をむけるのはやめてもらいたい。  実言は耳丸の様子に気づいて、礼に尋ねてきた。 「礼、耳丸とはどうだい?」  実言に続いて礼も、もう寝ようと寝台の上に上がった...
小説 wildflower

Infinity 第二部 wildflower6

碧は、幼い時からその容貌で人を惹きつけてきた。園栄は姪のその美貌にいち早く目をつけ、親を差し置いてその将来を決めてしまった。碧の父親である河奈麿も異論はないのだが。  わが娘が大王の御子をなし、その御子が次の大王になることはどれほど素晴らし...
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Infinity 第二部 wildflower5

礼は同時期に実言から碧妃とそして耳丸に引き合わされた。 碧妃とは体調管理を仰せつかっているということではあるが女同士の日常の話が楽しくて、地位の違いはあるものの心が通じるものがあった。  逆に、耳丸とは相容れないものがあった。  耳丸は実言...
小説 wildflower

Infinity 第二部 wildflower4

礼が一人で碧妃の元に通う初めての日。普段は畑仕事で汚れてもいい格好をしているが、今日は後宮にあがるのだからと衣装には気を使った。眼帯は目立たないように髪の色に近い墨色のものをつけて、薄色の袍に紺の裳をつけた。それらが控えめな色だから、背子は...
小説 wildflower

Infinity 第二部 wildflower3

十二月に入り寒い日が続いた。雪が降り、礼も久しぶりの都の冬が身にしみたが、実言は仕事による遠出もなく、多くの時間を二人一緒に過ごした。  そして、新年を迎えた。  岩城家の男たちは宮中行事に出席するのに慌ただしく過ごしていた。礼も、夫婦にな...
小説 wildflower

Infinity 第二部 wildflower2

秋も深まった十一月のはじめから、実言は半月ほど都の外へ遠征に行ってしまった。こんなに離れるのは久しぶりなので、実言が出発の朝に名残惜しそうに礼にまとわりついていた。 「本当に仲のよろしいことですわね」  嫌味ではなく、本当に感心して、縫は言...
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Infinity 第二部 wildflower1

礼が都に戻り、実言と夫婦になって、三月(みつき)。穏やかな日々を送っている。 九月に入っても、まだまだ暑い日が続いていた。礼は、朝のうちは実言と住む邸の裏手の畑の作物の世話をして、庭の隅に建てた小屋の中で薬草作りをして過ごした。  実言は九...
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