小説 wildflower Infinity 第二部 wildflower17 実言は礼が眠ったのを確かめて、添い寝していた体を起こして、縫を呼んだ。 隣の間に控えていた縫が現れた。 実言は寝所を囲んだ几帳の中から出て、縫に礼の体のことを話した。「私、気がつきませんでした。申し訳ありません。ああ、なんとおめでたいことで... 2019.11.04 小説 wildflower
小説 wildflower Infinity 第二部 wildflower16 春日王子は礼の右側に倒れ、礼の胸と足の上には王子の腕と足を乗せたままになっている。 礼は王子の手足を載せたまま、王子の寝息を聞いていた。そこで初めて涙を流した。声を上げないように、唇を噛み締めた。露わになったままの乳房をそっと肌着の襟を掴み... 2019.11.03 小説 wildflower
小説 wildflower Infinity 第二部 wildflower15 よりによって我が体内に子を宿したことを知ったその日に、このような話があるとは。 春日王子とは、前に詠妃のこの館に来たときに、ちょうど退出される場に行き合わせた方。また、月の宴のときに大王の部屋から出ていらして詠様のいる部屋へと向かわれるお見... 2019.11.02 小説 wildflower
小説 wildflower Infinity 第二部 wildflower14 月の宴が終わって、しばらくは礼にとっては穏やかな日々が続いた。 九月に入ると台風が来て、都も風や雨によって建物の被害が出た。宮廷は至急の対応を迫られて、岩城家も宮廷へ出て忙しい日々を送った。 十一月になると、新嘗祭の準備で忙しくなる。今年は... 2019.10.30 小説 wildflower
小説 wildflower Infinity 第二部 wildflower13 翌日は、岩城の邸全体が昨夜の宴の後の疲れで、皆一様にゆっくりとした目覚めだった。実言と礼も日が長けるまで寝室にこもった。侍女たちも、二人の邪魔をしないように、部屋には近づかなかった。 礼が部屋の中から澪を呼んだのは、午刻の頃だった。澪が格子... 2019.10.27 小説 wildflower
小説 wildflower Infinity 第二部 wildflower12 「礼」 耳元に口を寄せて、実言が囁いた。礼は我に返った。びくっと体を揺らして、実言の方を向いた。「大丈夫かい」 礼は声を発することなく、小さく頷いた。朔との再会が、礼の心をかき乱して落ち着かせない。自分はどんな顔をしていただろうか。荒益の声... 2019.10.24 小説 wildflower
小説 wildflower Infinity 第二部 wildflower11 礼は深々とお辞儀をして、碧とそれに続く女性たちの退出を見送った。碧たち一行が部屋を出て行くと、礼をここまで案内してくれた侍女が帰りも案内してくれる。 王族や官位の高い貴族たちで占められていた翔丘殿の正殿は徐々に人の数が減っていっている。礼は... 2019.10.23 小説 wildflower
小説 wildflower Infinity 第二部 wildflower10 「礼!」「碧様」 礼は深々と頭を下げた。「こちらへ。私の後ろへ来ておくれ」 碧は笑顔で後ろを向いて、礼を自分の斜め後ろへと導いた。そこには席が用意してあった。「退屈な儀式が終わって、これからは音楽や舞が始まるわ。楽しみね」 碧妃は無邪気に、... 2019.10.21 小説 wildflower
小説 wildflower Infinity 第二部 wildflower9 月の宴、当日。 朝から、岩城邸は落ちつかない。当主の住まうこの邸に一族が集まっているようで、本殿は賑わっている。実言と礼の離れの邸にまで人々の声は聞こえてきて、大勢が集まっている様子がうかがえた。 礼は自分の部屋で過ごしていると、本殿に行っ... 2019.10.20 小説 wildflower
小説 wildflower Infinity 第二部 wildflower8 梅雨も終わる頃、碧から来て欲しいとの文が届いた。礼は翌日に準備をして後宮に向かった。今日も耳丸が付き添った。後宮に上がる手続きをして、礼は一人で碧の部屋に向かった。「礼。よく来てくれました」 部屋に入ると、碧はにっこりと笑い、明るい声を掛け... 2019.10.17 小説 wildflower