小説 wildflower

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小説 wildflower

Infinity 第二部 wildflower47

夜明け前。 礼は一人起き出した。黙って小屋を出ようとしたが、耳丸が起きてしまった。そして、耳丸は用心棒のつもりで礼の水浴びに付き添った。女であると悟られないようにするのは大変だった。体の輪郭を出さないように着込んでいる礼にはこの夏の暑さは地...
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Infinity 第二部 wildflower46

未刻を過ぎた頃、横木が外されて扉が開いた。今まで耳丸と話をしてきた男を先頭にその後ろに数人の男が現れた。「顔を洗わせてやる」 そう言うと、耳丸と礼を立たせて小屋から連れ出した。危害を加えられる気はしないが、どこに連れていかれるのかわからず、...
小説 wildflower

Infinity 第二部 wildflower45

三方に張った板は適当に建てつけてあるので、隙間だらけであるが、小屋の中は蒸し暑く、頭から顔に汗が滴り落ちてくる。時々、吹く風が壁のない面から吹き抜けていって、一時の清涼をくれた。二人は苦しい時間を無言でやり過ごした。 扉の横木が外される音が...
小説 wildflower

Infinity 第二部 wildflower44

夜明けに、耳丸が目を覚ますと、すでに礼は体を起こしていた。「よく眠れたのか?」 耳丸が聞いた。礼は頷いて。「耳丸は?」 と聞き返した。 耳丸もよく眠れた。どの道を行くべきか悩んでいたが、睡眠をとったことで頭の中はすっきりしている。 礼は水筒...
小説 wildflower

Infinity 第二部 wildflower43

翌日、三人は夜明けとともに起きた。礼は必要なもの、薬草や布などを板に書き付けて、若見に渡した。若見は眉根を寄せて困った顔をしたが、昼には礼が必要としたものを全部持ってきた。耳丸は馬の世話をするために出て行った。ゆっくりと準備をして、日が暮れ...
小説 wildflower

Infinity 第二部 wildflower42

戸を開ける音で、中にいる人物の身じろぎする様子がうかがえた。「失礼しますよ」 妙に遠慮して、若見は声をかけながら入って行く。 部屋の中に入ると、隻眼の医師、耳丸さんはなんといって言っていたっけ、れ……せ、瀬矢、という人。片膝を立てて楽な格好...
小説 wildflower

Infinity 第二部 wildflower41

耳丸は男について、回廊を歩き築地塀をくり抜いた門を通り抜ける。これで官衙(官庁)を出て、その裏に続くその他の施設や役人たちの居住地に入った。横に立ち並ぶ建物は、下っ端役人たちの執務部屋や、食堂、倉庫だ。何棟かの建物を通り過ぎて、目的の建物ま...
小説 wildflower

Infinity 第二部 wildflower40

季節は春を過ぎて初夏へと移り変わっている。強い日差しに刺されながら、一言も文句言わず礼は馬を進めている。旅を始めてひと月が経った。男装束にも慣れて堂に入ったものだ。 予想通り、山犬を避けるために泊めてもらった集落を発って三日目の昼間に若田城...
小説 wildflower

Infinity 第二部 wildflower39

「……助かったな」 はあ、と大きなため息とともに耳丸が言って、やれやれと持っていた剣を置いた。礼は座り込んでいたが、立ち上がると耳丸のそばに来て座った。「怪我はない?噛み付かれたところはどうなっているの?」「あれは、持っていた袋に噛みつかれ...
小説 wildflower

Infinity 第二部 wildflower38

馬が逃げるという事件が起こったが、それも無事に戻ってきた。二人はその馬に乗って北へとひた走った。 礼は勝手に木を下りてしまい、実言を本当に怒らせてしまったと反省の気持ちを込めて礼は静かに耳丸の後ろをついて行った。口少なで、休憩や食事も無言が...
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