小説 Waiting All Night

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小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night47

礼が侍女の澪に髪をといてもらっている様子を、娘の蓮は後ろから右に左に横歩きして見ている。髪を結いあげて、礼が唇に紅をのせて化粧を終わらせたところで、我慢しきれずに礼の傍にやってきた。 「お母さま、きれい」  と言って、礼の肩に頬を寄せて抱き...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night46

今も、春日王子の邸で、酒の相手をしながら春日王子の言うことに耳を傾けていてた。  再び体調を崩された大王は、今は持ち直し小康状態である。寝付かれることはなく、儀式も執り行い、春日王子が代役をすることもない。しかし、気分がすぐれないと大事を取...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night45

手元の杯の酒は一向に減らない。口まで持っていっても、唇を湿らせるだけで、口に含むところまではいかないのだ。  哀羅王子は、杯を握ったまま、父から受け継いだ邸を出て吉野に行き、また吉野から都に帰って来た十五年の長き日々を思い出していた。  十...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night44

宮廷の門を出ると、荒益は真っすぐに邸に帰っていった。二条の西にある邸までの道のりは、先ほど実言に訊かれた朔のことを考えるのによい距離だった。  宮廷で妻の朔は何をしていたのだろう。  平静を装って、姉である幹妃の用事を手伝ったのだろうと言っ...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night43

宮廷では、話が漏れ聞こえるのを防ごうと部屋をどれだけ隔てても、それは難しいことである。使用人たちの情報収集力は恐ろしいもので、どれだけ小声で話しても、誰かの耳が聞きとって、口から口へと伝えられていくのだった。  その日の朝の大王の突然の体調...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night42

宮廷の奥では、大王の健康について再び問題になっていた。  朝餉を召し上がられた大王が突然気分を悪くされて、食べたものは全て吐き出されて横に転がり苦しまれた。息も絶え絶えの中で。 「春日を…呼べ」  とおっしゃった後、褥の上に臥せられた。次に...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night41

哀羅王子は、老爺に案内させて敷地内にある倉の前にいた。  哀羅王子や邸の少ない使用人たちの生活は苦しく、昨日から哀羅王子に出す食事も粟と芋を一緒に煮た粥だけになった。着る物だけは、宮廷に赴くために上等なものを春日王子からもらっていたが、邸の...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night40

朝餉を摂った大王が急に気分がすぐれないと言われた後、倒れられた。表立って騒ぎはせず、ひそかに弟である春日王子に連絡が入った。ちょうど佐保藁の邸で朝餉を摂っていた春日王子は、それを中断してすぐさま王宮に向かった。急なことで馬に鞍を載せている時...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night39

春日王子の邸である佐保藁邸に集められた人々は、隣同士で声を潜めて言葉少なに話しながらその人が現れるのを待った。  その中には哀羅王子もいた。今日呼ばれた人々が上座の正面に向かって両脇を列になって座っているが、哀羅王子は左側の先頭に座って、一...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night38

花の宴が終わって三日後、都を東西に渡る一条の通りに供の侍女を一人つけて、質素な身なりで歩く女人がいた。普段、その女人を見た者は振り返ってもう一度その顔を見てしまうほどの美貌の持ち主である。そのため女人は人目につかぬよう頭から織りの入った布を...
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