小説 Waiting All Night

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小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night67

間羽芭はこの邸を訪れた者から受けとった物を邸の外にいる仲間に渡さなくてはいけなかった。今、広い庭へ入って追っ手を巻いたが、外に出ようとしても門は固めてあるだろうし、これからどうしたものかと考えた。 「間羽芭!」  自分の部屋へは戻れないため...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night66

「王子、行って参ります」  小柄な老爺の日良居は哀羅王子の部屋で言った。 「ああ。苦労をかける」  哀羅王子は言った。昨日の実言の使者との打ち合わせで、哀羅王子と実言の五条の邸の間にある、大田輪王の邸に行き、そこに待機する実言の従者に警護さ...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night65

月の宴は陰陽によって、満月の日を選んで行われる。その夜に雲がかかるのか、雨が降るのか祈るのみである。  実言は夜明けとともに起きだして、簀子縁から階の半ばまで下りて天を仰いだ。  雲のない空だった。 「今は雨の心配はないわね」  追って簀子...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night64

礼は子供達を寝かしつけた後、自分の寝所へ戻り灯台の元で叔母の去から譲り受けた薬草の本を読んでいたが、いつの間にか眠っていた。夜明けとともに目を覚ますと、とっくに灯台の火は消えていたが、それよりも夫の実言が帰っていないことが気になった。  夫...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night63

そして、佐保藁の春日王子の邸にも、間者が翔丘殿での予行の後の酒席での出来事を報告しに戻った。  春日王子は女人と横になっていたところを、舎人の慌てた声に起こされた。不機嫌に返事をして起き上がると、乱れた寝衣の上から上着を引っ掛けた。女が寝返...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night62

月の宴を二日後に控えて、今日は会場となる翔丘殿で本番さながらの予行を行う日である。前日までに内装、装飾、舞台は整えられていて、番人が雨風の番をしている。  朝から翔丘殿には続々と人が集まってきた。まずは、宮廷から楽団が大人数で列をなして翔丘...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night61

月の宴は三日後に迫った。  礼は、夜遅くまで縫物をしていた。最近の実言は、宴の準備に忙しいらしく、邸には夜遅くに帰ってきたり、宮廷や本家に泊まって昼間にふらりと帰ってきたりした。今日も、昼間に出て行ったきりいつ帰ってくるかわからない。  縫...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night60

哀羅王子は家人を一人連れて、倉へと向かった。邸のすぐ裏にある倉には、十五年前にここを離れるとき、父である渡利王が書き記したものを箱にまとめて入れて収めてある。筆まめな父の書いたものを再びみようと思ったのだった。  家人が錠の前で少し苦戦して...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night59

それから朔は言われた通りすぐに寝所に入った。月は雲に覆われていて明かりのない夜である。真っ暗なのが嫌いな朔は高灯台に多めに油を入れるように命じていた。体を横にすると力が抜けて行って、自分がとても疲れていたことが分かった。静かに瞼を閉じた。 ...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night58

朔は後宮から部屋に帰ってくると、庭に面した階の一番上に腰を下ろして庭を眺めた。夏の暑さが緑を鮮やかに燃え立てさせていて、その間に色とりどりの花が咲いている。いつまで見ていても飽きない景色である。  実家の常盤家の庭も広くていろんな趣向を凝ら...
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