小説 Waiting All Night

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小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night97

夜明け前に野営をたたみ、薄暗い道を馬で走ってきた一行は、急に開けて目の前に広がるどこまでも水平線の続く水面を見て声を上げた。朝日が当たって、きらきらと輝いている。 「海か?」  と口々に言い合って、誰かはもう越前まで来てしまったかと呟いた。...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night96

「おお!ほら、見て見ろよ」  笠縄が声を上げた。その声に礼も笠縄の体の後ろから顔を出して前を見た。  そこには視界の先の先までも水面が続く光景が広がっていた。  これが春日王子が言っていた海のようで海ではない、大きな湖なのだ。 「春日王子!...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night95

東の空が白くなってくると、礼は短い眠りから自然と目を覚ました。体を起こすと、横に寝ていた朔も体を起こした。礼が目覚めるより前に目が覚めていたようだ。  朔は礼を見ると。 「お前の顔、昨夜の夜の疲れた顔のままよ」  朔に先に言われてしまった。...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night94

夏の夜は薄い衾一枚で足りるのはいいと、礼は思った。台所にいた侍女に先に部屋を出て行った男たちから離れた部屋に案内してもらい、薄い褥の上に膝を抱いて座っていた。昨日と同じ蒸し暑い夜だが、時折風が吹く。  今も柔らかい風が部屋に入ってきた、と思...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night93

礼はあたりを見回したが、自分がもっている膳を置く人はいない。 「その膳はそこに置いて、お前は酌をして回れ!」  いきなりそのような声が聞こえた。春日王子が杯に口をつけながらそう言い放ったのだ。  礼は末席に膳を置くと、徳利を取って杯を飲み干...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night92

できる限り急げ、との号令に弾正台、衛門府、王宮の役人、兵士たちが右に左にと散って、体がぶつかるのも構わずに自分の受け持った仕事をするために走り回っている。大極殿の前に人馬が集まって隊列を作っているところだ。  春日王子の邸から三つの集団が飛...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night91

妻の背中がみるみる小さくなるのを、実言はどこまでも見つめ続けた。小さな体が大きな馬に跨って勇ましく突き進むのを想像すると、今己が成すべきことに集中しなくてはと思った。  あの子を早く自分の元に戻したい。あの子がいなくなってしまっては、自分は...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night90

ゴトゴトキーキーと耳障りな音を立てながら暗い道を進み、車は無事に都から脱出した。  春日王子は車の背面にある小窓から後ろを見て、怪しげな影が近づいてきていないか確認した。何も見えないと分かると、上げた御簾を下ろして、前を向いて座った。  こ...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night89

どれくらいの時刻が経っただろうか。礼は、どれだけ時刻が経とうとも礼はその場を動こうとはしない。  朔は邸の中で何をしているのだろう。……春日王子と何を……。  礼は、膝の上に置いた拳をじっと見つめて、朔が邸から出て来るのを待った。  急に礼...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night88

かたり。  見据えていた扉の錠が開く音がして、哀羅王子は一層緊張した。 「王子」  即座に隣に座っている実言が声をかけた。 「大丈夫だ。心は決まっている」  弾正台の役人の男が扉からこちらに出て来た。 「中へ」  短い言葉で言って、扉の正面...
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