小説 Waiting All Night

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小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night117

謀反人春日王子の一味と思われたらどうしようか、と戦々恐々としている人物は少なくない。 それは、後宮も例外ではなかった。 大王の第三妃である詠は、与えられた館の外国風に設えた陶器を敷き詰めた庭先で椅子に座って庭の花や緑を眺めているが、心は落ち...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night116

暁の頃だというのに、下級役人たちはいつもより早起きして、一目散に宮廷の門の前まで来るとそれが開くのを、列を成して待っている。みんな私語はしない。黙って周りを盗み見ている。周りの役人たちが何を考えているのか想像している。この隣の男も後ろの男も...
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Infinity 第三部 Waiting All Night115

「……礼……よく無事に戻ってきてくれた」 実言は礼の手を掴むとすぐに自分に引き寄せて、腕の中に抱いた。 まだ濡れている髪の間に指を入れて掴むようにしっかりと礼の頭を引き寄せた。「……実言……ごめんなさい」 礼は実言にされるままに身を委ねた。...
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Infinity 第三部 Waiting All Night114

この大きな湖のほとりの土地で礼のするべきことは全て終わった。心はまだ朔の傍にいたいとも思うが、ここまで自分の我儘を通してきただけに後は夫と我が子のたち、そして、お腹の子のために都に戻る。そうと決めたら、間々代に帰ると告げた。 伊緒理はどうす...
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Infinity 第三部 Waiting All Night113

礼は目を覚ました。 夜明け前かと思ったが、それにしてはまだ闇が深い気がした。何かを感じて、起き上がり隣に寝ている伊緒理を見ると、衾がめくれ上がって、そこに伊緒理はいない。礼は驚いて、衾から抜け出して立ち上がった。 衝立の向こうに目をやると、...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night112

礼は邸に入ってすぐの部屋で横になった。礼の傍に座る伊緒理に、礼はその頬を撫でながら言った。「あなたはお母様のところへ行きなさい。私は横になっていれば直に治るわ」 伊緒理は後ろの部屋を振り返った。「お母様は眠っています……」「私も少し寝るわ。...
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Infinity 第三部 Waiting All Night111

目が覚めた。 とてもすっきりとした気分だと、伊緒理は思った。そして、自分の手の先を見たら、しっかりと握っていた。 母の手。 握りなおして、その手の感触をもう一度強く感じた。目を上げると母の横顔が見えた。白い顔。お母様はこんな顔だっただろうか...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night110

礼は朔の手を握ってじっとその顔を見ている。 朔は息苦しそうにしていて、予断を許さない状況だ。 その日の陽が沈んだころ、礼と朔がいる邸に実言の使いで高瀬が、山での出来事を伝えに来た。礼はその時ばかりは朔の手を放し、邸の外で春日王子の最期を聞い...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night109

「そうだ、買いかぶりも見くびりもしない。騙し合いや仲間の手を借りることもしない。今、ここに出せるものを出し合うしかあるまい。私も、そしてお前もな」 春日王子はにやりと笑って、構えている実言に向かって先手の攻撃を与えた。実言はそれを受けて、鍔...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night108

春日王子は階を上がってきた岩城実言と対峙し、睨み合っている。「春日王子、大王はあなた様から直接に話を聞きたいとおっしゃっておいでです。どうか私たちと共に都に戻って、大王とお話しください」 実言が言うと、春日王子はすぐさま言い返した。「私が戻...
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