小説 STAY(STAY DOLD)

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New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第四章14

冬の終わり、人によっては春の始まりの時期。朝夕は気温が下がってまだ肌寒いが、日中は暖かくなった。 蓮は、着込んでいた上着を朝餉を食べ終わった後に脱いで、今日の仕事である薬草の整理をしに倉へと向かった。 今日は井と同じ組になって、一緒に倉の中...
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New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第四章13

「桂様、ようこそ」 淡路が頭を垂れて挨拶をした。 それを合図に稽古場にいた二十名ほどの楽団員が一斉に頭を垂れた。 実津瀬も一番端に並んで同じようにした。 淡路を先頭に、扉の前に三重に重なって立った楽団員たちが体を折った姿に桂は目を瞠り、そし...
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New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第四章12

朱鷺世は搗き米を前ほど欲しがりはしなくなった。これまで露の握り拳ほどの搗き米の塊が一つでは足りないと言うので、二つ用意していたのに、今は一つで十分だというし、腹は空いていないと言う時もある。その時は二人で搗き米を一口ずつ交互に食べた。 腹が...
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New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第四章11

山には桜が咲いている。 束蕗原の去の屋敷の周りにも桜の木が点在しており、風に乗って花びらが舞って来る。 蓮は薬草園で摘み取りの作業をしている途中に、桜の花びらが頬に落ちて来て顔を上げた。 だいぶ暖かくなってきた。夜明けとともに起きて作業をす...
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New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第四章10

開かれたままの稽古場の扉に影が差して、人が一人ふらりと現れた。 しかし、今ではこの時間に現れる人物を誰か、と顔を上げて確認する者はいなかった。 岩城実津瀬が来た、と誰もがわかっている。 扉の近くで一人背中を丸めて座っている朱鷺世は稽古場に入...
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New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第四章9

淳奈の部屋で子守の苗と一緒に寝顔を見ていた芹のところに、侍女の槻がやって来た。それで、実津瀬が帰って来たのだと分かった。 芹は淳奈を苗に任せて、槻と一緒に夫婦の部屋に戻って行った。 庇の間に入ったところで、反対側の簀子縁から静かな足音が聞こ...
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New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第四章8

いつものように侍女の住居の前まで来た朱鷺世は指笛を吹いて露を呼び出した。 その日も露は台所から搗き米をかすめ取って柿の葉に包んだものを朱鷺世のために用意していたから、指笛が聞こえたらすぐに出て行った。 朱鷺世は無言で住居裏の森になった庭の中...
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New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第四章7

「朱鷺世!手だ!手!」 淡路の大声が稽古場に響いた。淡路の後ろには楽団の長である麻奈見が腕組して朱鷺世の舞を見ている。 「手を意識したら、次は足が疎かになっている!」 淡路は朱鷺世に近寄って手にしていた短鞭を振るった。 空を切った短鞭はビシ...
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New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第四章6

石の床の続く先には、椅子が三脚置かれていて、左端の椅子の後ろには雅樂寮の頭である麻奈見が立っていた。「麻奈見殿!」 実津瀬は声を上げた。 稽古場には行くが、それほど熱心に舞うわけではないため、最近は麻奈見を避けている。会うのは久しぶりだった...
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New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第四章5

翌日、実津瀬は中務省の館で仕事をした後、佐保藁の宮へと向かった。 宮廷の西北に位置する佐保藁という場所にある宮は、元は大王の邸であったが、いつの時か大王の兄弟に与えられ、それから代々王族が受け継いで住んできた宮である。先代大王の弟宮である春...
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