小説 STAY(STAY DOLD) New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第七章6 蓮と伊緒理と別れた実津瀬は、中務省の建物へと入って、棚から書類を持って来て昨日の続きの仕事を始めたが、それも、早々に切り上げて、同僚に挨拶をすると中務省を後にし、向かったのは雅楽寮の稽古場だった。 梅から桃へ、花の季節は移り変わっていても、... 2024.12.15 小説 STAY(STAY DOLD)
小説 STAY(STAY DOLD) New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第七章5 「蓮様、お待ちください」 後ろで曜が言った。蓮ははっとして振り返った。「すみません。人が多くて……歩くのも遅くて」 曜が小走りに走って来た。「いいのよ。私が早く歩いていたみたい」「いいえ。私がいけないのです」「ゆっくり行きましょう。……曜は... 2024.12.08 小説 STAY(STAY DOLD)
小説 STAY(STAY DOLD) New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第七章4 五日が経つのを蓮は指折り数えて過ごした。 しかし、その間をただだらだらと過ごしていたわけではなくて、朝起きると薬草園の手入れに行き、昼間は邸の隣にある診療所の手伝いに行くか部屋で写本をした。また、典薬寮に出仕するのに、母の礼と自分に何ができ... 2024.12.01 小説 STAY(STAY DOLD)
小説 STAY(STAY DOLD) New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第七章3 梅の盛りが少し過ぎた頃、蓮は父の後ろについて美福門から王宮へと入った。 父の実言の顔はどの門から入っても、門を守る衛兵は知っているようで、皆深々と頭を下げている。「ここは宗清が勤めている左衛門府が守る門だ。もしかしたら宗清に会えるかもしれな... 2024.11.24 小説 STAY(STAY DOLD)
小説 STAY(STAY DOLD) New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第七章2 「あら、蓮も一緒だったの?」 離れの実津瀬の部屋に入っていくと、淳奈の肌着を縫っていた芹が顔を上げた。手を止めて立ち上がると人数分の円座を出した。「どうしたのですか?二人とも難しい顔をして。そんなに難題を与えられたの」 円座に座った二人に芹... 2024.11.17 小説 STAY(STAY DOLD)
小説 STAY(STAY DOLD) New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第七章1 新年を迎える前に蓮と母の礼が束蕗原から五条岩城邸に帰って来た。 戻る前日に実津瀬が束蕗原に迎えに行くために都を発った。一泊して、翌日母と蓮を連れて都に戻って来た。 約一年振りに会う姉に妹弟たちは門の前に出ては、まだかまだかと待っていた。 実... 2024.11.10 小説 STAY(STAY DOLD)
小説 STAY(STAY DOLD) New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第六章19 翌日。伊緒理はこの邸のどこかにいるのだろうが、蓮は会うことはなかった。朝餉を食べて、薬草園に行き、手入れを手伝った。部屋に戻って、写本をして、気分転換に薬草箱の整理をした。夕暮れ時、曜と一緒に庭に下りて、秋の草花を見てまわった。庭を突っ切っ... 2024.11.03 小説 STAY(STAY DOLD)
小説 STAY(STAY DOLD) New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第六章18 「蓮さん!」 朝餉を食べた後、侍女の曜に付き添われて蓮は薬草園に行って手入れをしていたら、同じように手入れの仕事をしに来ていた井が声を掛けてきた。「……井さん!」 井は蓮の前に来て手を取った。「お仕事をしておられるのですね!」 それまで井と... 2024.10.29 小説 STAY(STAY DOLD)
小説 STAY(STAY DOLD) New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第六章17 もう、水の中に落ちる前と変わらない生活ができているのに、母である礼は今も心配して、蓮が目の前の食事に手をつけないでいると、手づから匙で粥をすくって蓮に食べさせようとする。「お母さま、私は自分で食べられます」「だって、椀を持たないから食欲がな... 2024.10.20 小説 STAY(STAY DOLD)
小説 STAY(STAY DOLD) New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第六章16 ピーっという音がした。 人は鳥の鳴き声と思うかもしれが、露には区別できた。 男が来たのだ。 露は妻戸を静かに開けて顔を出した。侍女たちが寝る建物の前に並ぶ大きな杉並木の一番遠くの樹の陰から男が顔を覗かせた。 夕方のあたりが暗くなり始めた頃だ... 2024.10.13 小説 STAY(STAY DOLD)