小説 あなた

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New Romantics 第一部あなた 第一章3

実津瀬は部屋の真ん中に寝転んで、ぼんやりと天井を見ていた。ともすれば、焦点はぼやけて、自分の意識の中に入り込んでゆく。  そんな自分を叩き起こすように、簀子縁をバタバタと走ってくる者がいる。 「実津瀬!」 「兄様!」  自分を呼ぶ声に意識は...
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New Romantics 第一部あなた 第一章2

「え、実津瀬、一緒に来ないの?」  岩城本家の末っ子である、鷹野が訊き返した。 「私はこれから、笛と踊りの稽古があるから、鷹野はお帰り」 「残念だな、今日はうちに面白い書物が届くから見ようと言っていたのに」 「そうなの?」 「今、異国の使節...
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New Romantics 第一部あなた 第一章1

季節は秋。  その日はお天気も良く、文句のない野掛け日和だった。  伊緒理は、都から馬を駆けらせて去様の領地である束蕗原に到着すると、あの家族が待っているからと、お付きの侍女一人に案内してもらってそのなだらかな坂を上って行った。  坂の中腹...
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