wildflower

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小説 I really like you

Infinity 第一部 I really like you17

桜は散ってしまった。礼は名残の花びらが舞うのと共に青い葉を茂らせている木を、薬草を作る館の前の置いている床子(縁台のようなもの)に腰掛けて見ていた。「礼、無理しないで。何もしないのよ。」 薬草を入れたかごを手にして、館の前に出てきた去りが言...
小説 I really like you

Infinity 第一部 I really like you16

礼はゆっくりと目を開けた。薄く開けた目の中に光を感じて、今が夜ではないことがわかった。ここ数日は、去や縫たちが近くで会話している声が聞こえて、自分は母や瀬矢兄様のところには行けなかったのだとわかった。 もし、私が死んでしまったら、実言は悲し...
小説 I really like you

Infinity 第一部 I really like you15

三月に入っても、まだまだ寒い日が続いた。その日も束蕗原には霜が降りて、土を踏むとザクザクと音がした。早朝の寒さも陽が登ると次第に和らいだ。 礼は束蕗原の畑の脇に自生している蓬生を摘んでいた。他にも去の弟子たちが畑に出て作業をしていた。空は晴...
小説 I really like you

Infinity 第一部 I really like you14

台風被害に見舞われた束蕗原は、女領主、去の指示の元、怪我人の回復、病気の水に浸かった土地に流行る病気の駆除などの対策を講じた。稲が実る時期と重なったために、住人たちは肩を落としたが、皆で励まし合って助かったものを刈り取り蓄えとした。去も貯め...
小説 I really like you

Infinity 第一部 I really like you13

季節は秋。雨の多い日々が続いた。昨年のこと。束蕗原には、一本の川が流れており、雨が多いとその川が氾濫を起こし、田やその周りの家を飲み込んだ。何年かに一度はそのようなことが起こり、この時期になると束蕗原の住人は備えを怠らない。今年も束蕗原の領...
小説 I really like you

Infinity 第一部 I really like you12

麻奈見は礼に会いに来ると言ったが、それは形だけの言葉となっていた。子供の頃から寒くなると麻奈見は咳が出て寝込む。そのため、少年の頃から冬には束蕗原に療養に来ていた。今では一人で来るようになったが。今回、また礼に会いに行こうと思った時に、都と...
小説 I really like you

Infinity 第一部 I really like you11

朝が来ても、礼は褥の上に仰向けに寝て、両手で顔を覆ったままだった。それは、一夜で礼の身体のいたるところに実言がつけていった印が疼いて、起き上がれないからだった。背中にも胸にも、ねっとりと礼を覆い尽くす実言の跡が、下着の上からこすっても、部屋...
小説 I really like you

Infinity 第一部 I really like you10

実言の訪れは突然、礼に告げられた。実言の従者が先に実言の訪れを知らせに来たのを応対した縫は、束蕗原の侍女に後のことはお願いして、慌てて礼のところに駆け込んできた。礼は薬を作る棟の中で薬草を干す作業を手伝っていたところだった。実言の南方への出...
小説 I really like you

Infinity 第一部 I really like you9

兵士や装備を整えるのに三月の期間がかかる。実言はその準備に毎日を忙しく過ごしていた。その合間をぬって、礼に会いに行った。相変わらず実言に冷たい態度をとり続ける礼だが、それでも実言は礼を愛しく思っていた。今はお互いの心は通じ合わなくても、いつ...
小説 I really like you

Infinity 第一部 I really like you8

歴代の大王は、外へ外へと勢力を広げ、強大な国を築いてきた。それは数代にわたり受け継がれてきた際限のない夢であり野心だった。先代の大王は特に北、南ともに兵を進めて征服し、各地の豪族を配下にして領土を広げてきた。まだ、北も南も、征服するべき土地...
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