wildflower

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小説 STAY(STAY DOLD)

New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第六章13

季節は夏から秋へと変わった。あの洪水の日からふた月が経とうとしていた。 洪水は束蕗原の風景を一変させてしまった。山崩れが起こり、作っていた稲や畑は水に覆われ、引いた後には大量の土、砂、石が残された。村人の家、そして命を奪った。しかし、住人た...
小説 STAY(STAY DOLD)

New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第六章12

意識は戻ったものの、蓮にとってあの一夜の経験は壮絶なものだったようで、隣で寝起きしている礼は、夜中に蓮がうなされている声に飛び起きた。 近づいて、そっと額に手を置くと熱く、たくさんの汗をかいている。 庇の間には侍女の曜が寝ていて、すぐに礼の...
小説 STAY(STAY DOLD)

New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第六章11

誰かが私の手を取ってくれた? 寒くて手足の感覚ないから、よくわからない。 蓮……って呼んでくれている? 私を知っている人かしら……。 ……諦めるな。……諦めるなよ、蓮……。 ……はい……諦めない……諦めないわ…… 蓮は誰かに体を受け止められ...
小説 STAY(STAY DOLD)

New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第六章10

「見たところ、顔や手、足に擦り傷……そして、足に打ち身……。流れてくる樹の枝などが当たったのだろうね……」 去はそっと蓮の体を触って言った。「それにこんなにも体が冷たいですよ」 曜は蓮の手や足をさすった。 それは去もわかっていて、しばらくし...
小説 STAY(STAY DOLD)

New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第六章9

「蓮!れーん!」 伊緒理は腹の底から力いっぱい声を出して蓮を呼んだ。「れーん!返事をしておくれ!」 声を出した後は、耳を澄ました。自分の声を聞いた蓮が応えてくれる、という希望を持って。 未刻(午後二時)を回った頃だった。 長年傍で怪我人の治...
小説 STAY(STAY DOLD)

New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第六章8

去の館に避難してきた者たちは皆、雨に打たれることなど気にすることなく、本道を遡ってくる水が迫って来る前に立ち止まって、声もなく目の前の水の流れを見つめている。 昨日まで目の前に見えていた光景は、もう記憶の中にしかないのだ、と黒い水を前にして...
小説 STAY(STAY DOLD)

New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第六章7

裏道の警護をしていた男たちの一人は立っていられない程に動揺している牧の肩を抱いて、もう一人は先に立って浅い川となった坂道を登っていった。「見習いの蓮という女人が誤って水の中に落ちて流された!」 という話は、見習い仲間たちの中に瞬く間に広がっ...
小説 STAY(STAY DOLD)

New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第六章6

蓮と牧は笠と蓑を着けて、並んで坂を下りて行った。 去の館には本道と呼ぶ表の道とは別に裏道がある。名前の通り、邸の裏に辿り着く道で、村人は通常使わないが、このような非常事態であれば、住人達は裏道も使うはずだ。蓮と牧は裏道を登って来る村人を助け...
小説 STAY(STAY DOLD)

New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第六章5

真夜中に大王はひとり、王宮の奥にある神殿に入って膝をつき、祈りと供物を捧げた。 束蕗原でも去が館の裏に作った祭壇に向かって祈り、蓮も祈った。井や鮎たち見習いも、そして束蕗原に住む者は皆、老いも若いも関係なく祈った。 雨を降らせてください、と...
小説 STAY(STAY DOLD)

New Romantics 第ニ部STAY(STAY GOLD) 第六章4

その川幅いっぱいまでに満ちていた水はどこに行ったのか。川の中央にちょろちょろと水の筋があり、かろうじて水が流れている。魚たちはどこへ行ってしまったのだろうか、前まで見えていた魚の泳ぐ姿も今は見えない。 去は病み上がりの体を押して、山の神、水...
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