2021-05

スポンサーリンク
小説 あなた

New Romantics 第一部あなた 第一章14

蓮は机に向かって、本の続きを写していた。  父と一緒に束蕗原から帰るのに唯一持って帰って来たものだ。例によって、母と……伊緒理がいつでも読めるようにと写している。  伊緒理……にこの本は必要かしら……。  いや、違う。本を写す私は必要かしら...
小説 あなた

New Romantics 第一部あなた 第一章13

「実津瀬!」  今、この邸にいるはずのない人の声がして、実津瀬は寝転がっていた体を起こした。  二日続けて塾を休むのは良くないと、実津瀬は早朝に宮廷の見習いの仕事の後、塾に行った。  昨日、真面目な実津瀬が来なかったこと心配してか、多くの人...
小説 あなた

New Romantics 第一部あなた 第一章12

今日、父が束蕗原に行っていてよかった。  実津瀬は、心からそう思った。  邸に家族は誰もいない。自分の様子が変でもそれを何かといってくる者はいないのだ。  雪と別れる前に背を向けて袴をつけ直し、脱いだ袍に袖を通して帯を締めた。雪は、単衣を肩...
小説 あなた

New Romantics 第一部あなた 第一章11

束蕗原に岩城実言が到着した。従者二人を連れて、馬を飛ばして都の北東にあたるこの地に来たのだ。  去の邸の離れにいる礼や蓮たちに、館の使用人からすぐに連絡が入った。宗清は久しぶりに会う父の到着に喜び、簀子縁をわき目も降らずに走って行った。それ...
小説 あなた

New Romantics 第一部あなた 第一章10

雪が言った明後日のその日、実津瀬は雪と会うということが決まっているだけだというのに、変に体に力が入ってしまう。意識しなければ、右手右足を同時に出して歩いてしまいそうになる。  女人に心を囚われるとこんなことになってしまうのか、と実津瀬は内心...
スポンサーリンク