2020-09

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小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night92

できる限り急げ、との号令に弾正台、衛門府、王宮の役人、兵士たちが右に左にと散って、体がぶつかるのも構わずに自分の受け持った仕事をするために走り回っている。大極殿の前に人馬が集まって隊列を作っているところだ。  春日王子の邸から三つの集団が飛...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night91

妻の背中がみるみる小さくなるのを、実言はどこまでも見つめ続けた。小さな体が大きな馬に跨って勇ましく突き進むのを想像すると、今己が成すべきことに集中しなくてはと思った。  あの子を早く自分の元に戻したい。あの子がいなくなってしまっては、自分は...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night90

ゴトゴトキーキーと耳障りな音を立てながら暗い道を進み、車は無事に都から脱出した。  春日王子は車の背面にある小窓から後ろを見て、怪しげな影が近づいてきていないか確認した。何も見えないと分かると、上げた御簾を下ろして、前を向いて座った。  こ...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night89

どれくらいの時刻が経っただろうか。礼は、どれだけ時刻が経とうとも礼はその場を動こうとはしない。  朔は邸の中で何をしているのだろう。……春日王子と何を……。  礼は、膝の上に置いた拳をじっと見つめて、朔が邸から出て来るのを待った。  急に礼...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night88

かたり。  見据えていた扉の錠が開く音がして、哀羅王子は一層緊張した。 「王子」  即座に隣に座っている実言が声をかけた。 「大丈夫だ。心は決まっている」  弾正台の役人の男が扉からこちらに出て来た。 「中へ」  短い言葉で言って、扉の正面...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night87

大王が人に会うための部屋、謁見の間には岩城園栄と弾正台長官の藤原七重、もう一人内大臣の早良高泰がいた。今夜の大王の奏上について、弾正台とは別に証人になってもらうために、園栄はどの陣営の色もついていない内大臣を叩き起こしてこの場に同席させたの...
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