2020-09

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小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night102

春日王子の騎馬たちはすぐ後ろを追ってくる馬の姿を見て慌てた。 「あれは、大王の馬だ!」  最後尾を走っていた兵士が叫び、皆は戦慄した。とうとう大王軍と対峙する時が来たのかと。 「山へ上がる!」  馬は脚を速めて、山へ上がる道に向かった。 「...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night101

縄を解かれて放たれた犬のように、背の高い草の続く林の中を実言の斥候は走りだした。その後を馬に乗った実言たちが追う。  途中、絶命している二人の男を見つけた。一人は知らない男だが、もう一人は実言の下で働いている男だった。 「軒(のき)尾(お)...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night100

馬に乗って自陣に戻った兵士はすぐに実言に報告した。報告を聞いた実言は迷いなくその場所に一団全員を向けることを決断し、号令を出した。  その場にいた騎馬隊はすぐに馬に跨り、駆けて行った。小さな目印を頼りにその背の高い草むらの中に進み行った。途...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night99

実言たち大王の軍団は湖のほとりの邸から、細心の注意を払って進んだ。どこで春日王子の一団を発見して、戦になるかわからないからだ。 「ここら辺りには、春日王子を支持する者はいるのか?王子には各地に懇意にしている豪族がいるだろう。そこの子女を王宮...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night98

夜明け前、邸に女を一人置いて、春日王子たちは出発した。  春日王子は出発前に朔の顔色があまりにも悪いので、心配している。背中にすがる体はあまりにも軽い。朔に何を聞いても、旅は初めてだからと言って、その後は迷惑をかけてすまないと謝るばかりだっ...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night97

夜明け前に野営をたたみ、薄暗い道を馬で走ってきた一行は、急に開けて目の前に広がるどこまでも水平線の続く水面を見て声を上げた。朝日が当たって、きらきらと輝いている。 「海か?」  と口々に言い合って、誰かはもう越前まで来てしまったかと呟いた。...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night96

「おお!ほら、見て見ろよ」  笠縄が声を上げた。その声に礼も笠縄の体の後ろから顔を出して前を見た。  そこには視界の先の先までも水面が続く光景が広がっていた。  これが春日王子が言っていた海のようで海ではない、大きな湖なのだ。 「春日王子!...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night95

東の空が白くなってくると、礼は短い眠りから自然と目を覚ました。体を起こすと、横に寝ていた朔も体を起こした。礼が目覚めるより前に目が覚めていたようだ。  朔は礼を見ると。 「お前の顔、昨夜の夜の疲れた顔のままよ」  朔に先に言われてしまった。...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night94

夏の夜は薄い衾一枚で足りるのはいいと、礼は思った。台所にいた侍女に先に部屋を出て行った男たちから離れた部屋に案内してもらい、薄い褥の上に膝を抱いて座っていた。昨日と同じ蒸し暑い夜だが、時折風が吹く。  今も柔らかい風が部屋に入ってきた、と思...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night93

礼はあたりを見回したが、自分がもっている膳を置く人はいない。 「その膳はそこに置いて、お前は酌をして回れ!」  いきなりそのような声が聞こえた。春日王子が杯に口をつけながらそう言い放ったのだ。  礼は末席に膳を置くと、徳利を取って杯を飲み干...
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