2020-07

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小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night60

哀羅王子は家人を一人連れて、倉へと向かった。邸のすぐ裏にある倉には、十五年前にここを離れるとき、父である渡利王が書き記したものを箱にまとめて入れて収めてある。筆まめな父の書いたものを再びみようと思ったのだった。  家人が錠の前で少し苦戦して...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night59

それから朔は言われた通りすぐに寝所に入った。月は雲に覆われていて明かりのない夜である。真っ暗なのが嫌いな朔は高灯台に多めに油を入れるように命じていた。体を横にすると力が抜けて行って、自分がとても疲れていたことが分かった。静かに瞼を閉じた。 ...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night58

朔は後宮から部屋に帰ってくると、庭に面した階の一番上に腰を下ろして庭を眺めた。夏の暑さが緑を鮮やかに燃え立てさせていて、その間に色とりどりの花が咲いている。いつまで見ていても飽きない景色である。  実家の常盤家の庭も広くていろんな趣向を凝ら...
小説 Waiting All Night

Infinity 第三部 Waiting All Night57

荒益は母と息子の伊緒理が住んでいる椎葉家の別宅に着くと、侍女が飛んできた。その顔を見て、伊緒理だな、と思った。 「どうした?そんなに悪いの?」  荒益は、答えによっては飛び出していくつもりだ。 「いいえ。今は、落ち着かれています。熱も下がり...
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